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ねるねるねるーの回

「ミンちゃん、いいもん買ってきたぞ!」 昼休みの教室、席で弁当を食べていると、購買で昼飯を買いに行っていた広志が、嬉しそうに僕の前の席に座った。 ちなみに僕の名前は姫崎 ベンジャミン。 母親がロシア人なのでこの名前なだけで、DQNなわけでは無い。それで、名前が呼びにくいからって「ミンちゃん」になった。 最初「ベンちゃん」にしようとしたから、それはやめさせた。 「で、いいもんてなんだよ」 睨みつけるような顔で、実に相手を見下したような口調で言ってしまっているという自覚はある。 心の中ではこんなに好きなのに、一度板についたこの、相手に威圧的に話してしまう癖が治らない。 でも、広志はそんな僕の態度に対して、特に気にしない様子で接してる。 あー、なんて心が広いんだろう!その大きな優しさで包みこんで、結んで縛って、雁字搦めにして欲しい! 「購買にコレ売ってたんだよ、ねるねるねるー」 「まさか、それがいいもんじゃないだろうな」 「いやぁ、いいもんだろ。男子校の購買という限られたスペースにねるねるねるーを置く、おばちゃんの心意気が素敵じゃないか」 「ねるねるねるーはいいとして、昼飯はどうした?」 広志の手には、ねるねるねるーしか無い。 「男子校の購買は戦争だぞ。ねるねるねるーを手にしていたら、他の商品は無くなっていた」 「何も残って無かったのか」 「ねるねるねるーは残っていた」 はっきり言って、広志は頭が弱い、悪く言えば馬鹿。でも、そんなところも、超絶可愛らしい! 広志はパッケージを開け、ねるねるねるーを 作り始めた。 容器に二種類の謎の粉末を入れ、ペットボトルの水を少量加え混ぜ合わせて、どんどん練っていくと、色が変わり膨らんでいった。 できたあがったねるねるねるーを一口で食べた終えた広志は一言 「うまい?」 「疑問形かよ」 馬鹿にした様な、吐き捨てるように言ってしまった。 「いや美味いよ、思ったより。」 苦し紛れ的にそう言って、パッケージの裏の説明文を読みながら 「でもさ、昼休みの45分の間に、酸性とアルカリ性色素を混ぜることで色が変わり、重曹とクエン酸を混ぜることで膨らむということを身をもって知ることが出来たんだから悔いはない」 「腹減ってないの?」 「減ってる、ミンちゃん弁当分けて!プリーズ、ピロシキ、ボルシチ、ビーフストロガノフ!」 おもいっきり頭下げてきた。 ホントに、どうしてこんな馬鹿なことばかりするのか。でも、そんな少年の心を失っていないピュアさが最高に好き! 「そんなロシア推しの弁当じゃねーから。今回は分けてやるけど、これに懲りたら次からは変なもの買うなよ、バカ」 広志は「ありがとうございます!」と言いながら、分けてやったおにぎりを頬張った。口一杯にしながら、おにぎり頬張る顔もクール。 ーー「ミンちゃん、いいもん買ってきたぞ」 翌日の昼休みも同じセリフを言ってきたので、ドスの利いた声で「何買った?」と言ってしまった。 「箱の中が迷路になってて、銀の玉があって、ゴールに空いてる穴に銀の玉を入れるおもちゃ」 「食べ物ですら無くなったな、それより男子校の購買に、そんな名称も分からないおもちゃ置くおばちゃんのチョイスもヤバイ」 広志はそのおもちゃで遊んでいたが、40秒で飽きてしまい、弁当を分けてくれとほざいたので、口に黒パン突っ込んでおいた。

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