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16 side.r

「っえ、ゲェ…ォエっ……ゔ…ァエ゛ッ…」 「はぁ?てめェ吐くなよ汚ねぇな! 服に着くだろうが…謝れよ!」 謝れ…だと? どうしてお前みたいな糞野郎に俺が謝るんだ。 そう、思っている筈なのに 「……さ、ぃ…」 「あぁ?!」 番を持つΩが起こす拒絶反応は お前が思っている何倍も何十倍も辛いものだ。 「め、な……さい゛ッ」 「聞こえねーよ!!」 今まで一体何人の罪の無いΩを こうして暗闇の底へ突き落してきたんだ。 「ごぇ゛んぁあ゛さい゛っっ!!」 俺は、お前に犯された被害者たちの無念を背負って お前に法の裁きを受けさせなければいけないんだ。 それなのに なあ、どうしてだよ。 「っは。言えるじゃねえか…。 ここだと人目につくしよォ、場所変えるぞ」 「……っ、」 俺はどうして、お前ごときに歯向かう事も出来ない。 「…つーか、なんかフェロモン出てね?お前。 やべ…マジで興奮してきた」 「あ…ぅ、そ……っ」 つい先日発情期を終えたばかりなのに 綾木にしか反応しない身体は何処か熱を持ち、まるで番う前のように自身の匂いが周囲に蔓延る。 いくら番が居たとしても 運命の相手は例外なのだろうか。 そんな事があり得るのだろうか。 何処までも、浅はかで愚かな俺の血。 所詮、淫乱で他よりも劣るΩ。 あぁ これが運命を証明する本能の力だと言うのなら 今すぐにこの身体を使い物にならなくなるまで痛めつけてしまいたい。 自身の拳銃で、脳を、首を、心臓を 粉々になるまで 打ち砕いてしまいたい。 こんな身体いらない こんな自分いらない 生まれて来なければよかった 死んでしまえばよかった 苦しんだあの日 涙を堪えたあの日 いつか報われる時が来るなんて思わずに さっさと人生を諦めていれば この手で幕を下ろせていれば… 「……う、めいの…α、様……ッ、ゔっ…」 こんな、死ぬよりもよっぽどか辛い現実を 見せられなくても済んだのだろうか。

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