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epilogue side.r

帰り道は、最短ルートを示すナビを無視して少し遠回りをした。 海岸沿いを走るのに、音楽や会話は必要ない。 髪が揺れる程度窓を開けただけでも、潮の香りと波の音が、俺と澄晴を包み込む。 「来碧さんって、名前の由来とか聞いた事ある?」 「は?突然だな」 澄晴は、まだ高い位置にある太陽が幾つも光の欠片を落とす海を眺めながら口を開いた。 自然が奏でる伴奏の上に軽やかに乗った澄晴の声を簡単に拾えてしまうのは、きっと、いつだって彼の声を恋しく思っていたからだろう。 「俺は名前の通り、晴れた空が由来なんだけどね。 来碧さんの碧は、ちょうどこんな海の色を表したりするよなって思って」 ちらりと助手席に座る澄晴の向こう側を覗けば、そこには正に碧海が広がっている。 「澄んだ空に碧い海って、最高の組み合わせじゃない?俺が一番好きな景色かも」 …あぁクソ。参ったな。 まさか澄晴がここまでのロマンチストだったとは想定外だ。 恥ずかしい奴だと笑ってやりたいのに、悔しいくらい全てが決まりすぎて…格好良すぎて、顔が熱い。 「な、名前の由来なんて聞いた事ねえ…よ。でもま、海は好きだったみたいだな」 「っふは。照れてる」 「照れてない」 「わかるよ」 「わかるな」 大切な人と、隣同士くだらない会話を繰り返す平日の昼下がり。 体の調子は残念ながら絶好調とは言えないが、心はどこまでも穏やかだ。 明日も、明後日も、その先も 彼と一緒ならいつまでも、きっと。 暇をしていた澄晴の右手に、左手の指を絡めた。 Fin.

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