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「でも、どちらも違ったみたいです。来碧がちゃんと幸せを見つけられる子で、よかった。 …貴方みたいな、素敵な番に出会えてよかったです」 Ω性の彼女が思う“幸せ”の定義とは一体なんだろう。 発情を安定させる事、生活に支障をきたさない事…きっと俺には考えつかないような事まで様々なんだ。 だが、一つだけ確信を持って言えるのは この先何年何十年、ずっと笑顔を忘れずにいられる事。 「幸せにします…きっと。 もう来碧さんが独りで苦しまないように、僕の全てを尽くして彼を守ります」 俺よりずっと、細くて小さな女性の手。 しっかりと握られたその力強さが、自身が壊れるまで…いや、壊れてもなお息子を大切に想う一人の母親としての気持ちを物語っているように感じられた。 どんなに苦しくても、辛くても──。 一人で頑張りすぎてしまう所は、母親譲りなのだろう。 限界を超えてしまった彼女があの男性のような支えを見つけられたように、俺も来碧さんを囲う暗闇を照らす灯になりたい。 道に迷ったとき、次の一歩を踏み出せるような 前を向ける様な、そんな存在に。 会話に区切りがつき、ふと顔を上げればカーテンの向こうに見えた二つの影に気付く。部屋へ入ってきたことは音で気が付いたのに、すっかり忘れていた。 彼らもまた、二人で話をしてきたのだろう。 「…入っていいか?」 来碧さんの声色一つで心情を読めるようになった唇は、静かに笑いをこらえる。 俯き加減で戻ってきた彼の声は、普段より少しだけトーンが低い。 だからといって、機嫌が悪いわけでも元気がないわけでもなくて。 まったく…強がって冷静でいようとすると、すぐにこうなるんだから。 嬉しいとか、恥ずかしいとか もっと見せてくれてもいいのにな。 まあ、俺が気付いてあげられるのなら、それでいいか。 暫くは親子の会話を中心に、たまに俺やお母様の恋人も参加したりして、時間が過ぎるのはあっという間だった。 男の人はもう少し病室に残るらしく、先に席を立ったのは俺達だ。 帰り際、来碧さんがお母様の手をきゅっと握って囁いた言葉に、お母様もまた柔らかな笑みを浮かべる。 「お母さん、ありがとう。 諦めないでくれて、本当に…」 それぞれの道を歩み出す親子は、光の道筋を見つけたように輝いていた。

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