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第一章 謎の怪我人

 夕刻に振り始めた小雨が、粉雪に変わっている。  夜、コンビニから外へ出た小咲 未悠(こさき みゆう)は、思わず身をすくめた。 「うぅ、寒い」  寒いのは、苦手だ。  早く帰って、お風呂に入って。 「宿題やって、寝ちゃおう」  小走りの未悠だったが、ふと違和感を覚えて立ち止まった。  何か、いる。  通り過ぎた細い路地に、確かに何かいた。  そっと後戻りして見てみると、そこにはうっすらと雪を被った男が倒れていた。 「あの、大丈夫ですか?」 「大丈夫。放っておいてくれないか」 「でも」  そうは言っても、この寒さだ。  このまま寝入ってしまえば、危険かもしれない。  未悠はそう考え、男の体に触れた。  助け起こそうとした。  すると、指先にぬるりと温かな感触が。  まさか。 「血!?」  男は、腹部から血を流していたのだ。

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