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第一章・2
酔っぱらいかと思っていたが、まさか怪我人だったとは!
「すぐに救急車を呼びますから!」
慌てる未悠の手首を、男が掴んだ。
「それは困る。これくらい平気だから、通報しないでくれ」
「でも」
男の白いシャツは、どす黒く染まっている。
大量に出血しているに違いないのだ。
「頼む。通報はしないでくれ」
重ねて頼まれ、未悠は腹をくくった。
「じゃあ、僕のマンションに連れて行きます」
「何だって」
すぐに未悠はタクシーを止め、男に肩を貸して乗り込んだ。
腹からは、まだじわじわと出血が進んでいるようだ。
未悠は、自分のマフラーを彼の傷に当て、止血を試みた。
幸いタクシーの運転手に気づかれることも、シートを汚すこともなく、マンションに着いた。
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