3 / 101

第一章・3

 男は強がりを言う割には衰弱しているらしく、未悠の肩に重く身を任せていた。  しかし足取りはしっかりしている。  命の危険はなさそうなので、未悠はひとまず安心していた。  それでも、背が高い。  180㎝は軽くあるだろう。  分厚い筋肉に、頑強な骨格。  小柄で華奢な未悠にはかなり負担で、ようやくリビングのソファに横たえた。  寝室のベッドまで連れて行くのは、無理だった。 「すぐに、血を止めないと」  だが、どうやって。  すると男は、にやりと笑って言った。 「大丈夫。もう、止めたよ」 「止めた?」  止まった、ではなく、止めた? 「ど、どうやって」 「気合いだよ」  その言葉に、ぽかんとする未悠を尻目に、男は立ち上がった。 「さて、と。じゃあ、さよなら」 「ちょ、ちょっと待ってください」  仮にも、今まで流血していたのだ。  未悠は慌てて男をとどめた。

ともだちにシェアしよう!