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第一章・4

「よかったら、今夜は泊っていきませんか? 僕、一人暮らしなので気兼ねはいりませんよ」 「いいの?」  それは助かる、と男は乗って来た。  なにせ、服が血だらけなのだ。  このままでは、どこに行っても不審者だ。  未悠は、良かった、と笑顔を返した。 「僕、小咲 未悠といいます」 「私は、名無しの権兵衛」 「え?」 「いや、私の名前なんて、知らないほうがいい」  男は、頭を掻いた。 「きっと君を、危険に巻き込むことになる。トラブルメーカーなんだ、私は」  そんな言葉に怯みもせず、未悠は笑顔だ。 「ご心配なく。かかる火の粉は、自分で払います」  今度は男がぽかんとした後、愉快に笑った。 「いや、失礼。じゃあ、名乗ろうか。私は、城嶋 健(きじま けん)だ」  第二性は、アルファ。  健は、そう付け加えたが、未悠には言われなくても解っていた。  これだけ体格に恵まれた人間は、まずアルファと見て間違いない。 「僕の第二性は、ベータです」  未悠の言葉を、健は信じなかった。  ただそれを取り上げて正すことは、しなかった。 (オメガであることを隠すには、それだけの理由があるんだろう)  そう未悠を思いやり、黙っていた。

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