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黒猫王子は狼騎士に溺愛される🎃6(ハッピーハロウィン)

「うわああ、びっくりしたああ!! 和哉急に何しでかすんだよ!」  コンテストの授賞式の後も二人はそろって商店街を歩く予定だったのだが、会場が一時騒然としまい、引っ込んだ本部の三階にある会議室から出るに出られなくなってしまった。  飲み物やご褒美のようにハロウィン限定南瓜餡パンを受け取けとり一息をついたら、着替えをしてこのままイベントが終了するまで休んでいいことになった。  会議室の椅子に柚希は腰かけ、猫耳の付いたまま、着替えの入った袋を枕にするように頭を突っ伏している姿がなんだ可愛らしい。和哉が声を立てて笑うと、柚希は真っ赤になった顔を上げた。 「和哉~! 何笑ってるんだよ」 「さっきのあれ、大分うけたみたいだね。ほら」  ちゃっかりポケットにスマホを持ち歩いていた和哉が商店街のSNSを見せてくれたら、そこには先ほどの狼王子の騎士叙任式の様子や、王子様の姫抱っこ姿の様子がすでにアップ済みになっていた。  仲良く頭を突き合わせて画面を共に覗きこみ、にこにこしている和哉とは対照的に柚希は顔面蒼白といった感じに慌てている。 「引き受けるんじゃなかった……。兄弟そろって何やってるんだって、世の中に拡散されたら恥ずかしすぎる」 和哉はこつん、と額を柚希のそれに当てる。 「兄弟じゃなくて、番だよ。柚希」 「番……。そうだな」  柚希は頬を上気させ、今日一番の柔らかな美しい笑顔を見せた。  柚希のこんな愛情深い嫋やかな微笑みは、初めてであったころから和哉だけの宝物だ。  和哉は感極まりながら隣の椅子を引くと、柚希に向かってゆっくりと身をかがめる。白い頬に指先を這わすと、柚希は少しだけ潤んだ瞳を瞑る。 「柚希、石鹸の香りがする」 「……せっけん? 汗かいたのに?」 「柚希のフェロモンだよ。僕を誘ってるってこと」    もう柚希が清潔感あるこの香りを漂わせ、晶を誘うこともない。 (僕だけの香りだ)  遠慮なく顔を近づけ柚希の唇を堪能しようとすると、珍しく彼の方から口を開け舌で和哉のそれを強請ってくる。柚希の柔らかな舌を唇で食めば、身をよじらせて鼻から甘い吐息を漏らすのが愛おしい。 (素直な柚希も可愛い。嫉妬して、僕のことちょっと独占したくなったのかな?) 「んっ……。カズも、いい匂いするよぉ」  キスの合間に甘ったるい声で囁かれ、衝動を止めることができずに唇を何度何度も重ね合う。水音を立て熱い粘膜を擦り合わせるような口づけは狂おしく、和哉は夢中になればなるほど、流石にここで兆してしまったらまずいと身体を離そうとした。  するとその逃げを感じ取ったのか。急に柚希はジャケットを脱ぎ長机に置いて立ちあがる。上着と尻尾のテグスがくっついていたのでジャケットは椅子まで落ちていったが、柚希は薄いシフォン素材のブラウス一枚の姿になってた。  ほっそりした腰がより強調され、もどかし気に首まで詰まっていたブラウスのボタンをはずして真っ白な首筋を露わにしていく。その上柚希は黒いブラウスの下には何も身に着けておらず、つんっと立ち上がった乳首が黒いシフォンの向こうにいやらしく透けて見える。和哉は思わず喉を鳴らしそうになった。 「カズ、見過ぎ。やらしーの」 「柚希こそ……。色っぽくてたまんないな」  柚希は挑発的な雰囲気を漂わせそんな和哉を嫣然と見おろした後、和哉の頬を手で挟むようにして角度を変えながら口づけをさらに続けてきた。  柚希の勢いに飲まれ、和哉が狼の尻尾を下敷きにしてパイプ椅子に座ると、今度は大胆にも膝から和哉の脚の上に乗り上げて、激しく唇を貪ってくる。  和哉も思わず火がついて止まれず、猫の尻尾をかき分け柚希の腰を抱えてぐっと引き寄せると、悪戯をするように、片手で柚希の胸を撫ぜ上げたあと、乳首の先をかりっと指で引っ掻く。 「ん、あんっ」  婀娜っぽい声を上げる唇を塞いでしまい、和哉が舌で煽るように柚希の歯列をなぞると、柚希はふるふるっと快感に身体を震わせ、一度顔を離す。 「狼の口付けはお気に召しましたか? 王子様」 「……ばか」  その半ば口を綻ばせ潤んだ瞳で和哉を誘惑する顔があまりにも艶美で、これまでも何度もそうされてきたように、また柚希に心を奪われた。 「綺麗だ」 「そっちこそ。俺を喰い殺しそうな顔がすげぇ、くる」  柚希はあやまたず普段とは違い長いウィッグをつけた和哉の首に腕を回すと唇の端についた雫をぺろりと舐めまわした。さながら猫のようなしなやかな動きに和哉が息をのむ。今日は吊り上がり気味にアイラインを引かれた艶めかしい視線で見下ろしてくる。  柚希のあまりの色っぽさに充てられていたら、柚希が追い打ちをかけるように腰をくいっと押し付けてきた。互いの欲望がぐりっと触れ合う。 「狼騎士様、硬いものが当たりますけど?」  黒猫王子というより耳をくすぐる魔性めいた声色は美しい魔物のようだ。 「性悪猫っ!」 「どっちが性悪? 女の子を沢山たぶらかして」  やはり妬心からこんな風に柚希に求められるのかと思うと、何とも言えないほの昏い悦びに心が沸き立つ。 「……へえ? 柚希にもやっと僕の気持ちも分かった?」 「どういうこと?」 「本当に分からない? 僕はいつだって柚希に近づく奴は全員、消えてしまえって思ってたよ? 柚希は違う?」 柚希は目を丸くして、その後すぐに赤い舌を見せつけるようにして自らの唇を獣めいた仕草で舐め上げる。 「……俺も思ったよ。俺の番に、触れるんじゃねぇって」  柚希がそんな風に本音を漏らして和哉の唇に吸いついてきたから和哉は喜びに心を震わせる。再び唇を貪り合うようなキスを繰り返しながら、和哉は柚希の背中を抱いて腰まで乗るように長机に押し倒す。そしてそのまま白い首筋に舌を這わし舐め上げながら柚希のズボンの金具を緩めていった。 「かず、流石にそれはだめだ!」  制止する柚希の手を阻みながら勢いよく下着毎抜き去ると、猫の尻尾もくたんとなって、テグスで繋がったままのジャケットも古びた灰色の床性器に落ちていった。  真っ白な剥き出しの下半身には、綺麗な色の性器がゆるく芯を持ち先走りの雫を垂らしている。上半身は肌の透けた黒いブラウス一枚。しかも長い脚にはブーツと靴下ははいたままの猫耳姿。滾るしかない恋人の艶姿に和哉が興奮で息を弾ませると、涙目になった柚希が足を床に下ろそうとしたので和哉は両腕を使って長机の上で割り開いてしまった。 「カズ、だめっ、誰かきたらやばいから!」 そんな柚希を黙らせるように、真っ白な臀に自らの硬い欲望を擦り付けた。ひくんっと柚希は身体を震わせる。 「じゃあ騒がないで。ここまで僕のこと煽ったのは柚希でしょ? 僕をこんなにした責任取ってくれないとね」  急に外気に触れ柚希のペニスはやや縮こまったが、和哉は躊躇せずそれを口内へ引き入れる。 「だめ、だめ、ああっ……」  じゅぶじゅぶと音を立てて口淫しながら震える内ももを撫ぜていた手で会陰をなぞる。するとたちまち柚希のそれは再び芯を持ち震え始めた。  声を上げることができずに柚希は必死で口を手で覆う。 「柚希、びちゃびちゃに濡れてるよ」  和哉は一瞬口を外しそう呟くと、蜜壺にまで不埒に指を伸ばし、滑る蕾をぬくぬくと指で犯しはじめた。 指でも舌でも柚希が好む場所を捉えて攻め、柚希の雄のくびれを舐めあげまた口に含む。 柚希はこらえきれぬ悲鳴を手の隙間から漏らし、あっけなく腰を跳ね上げて和哉の口内にたっぷりと蜜を放った。   それを飲み干し欲望に濡れた眼差しを向ければ、甘い詰り声で涙目で見上げる瞳に和哉の欲望がさらに膨れ上がる。 「柚希、やだやだいいながら、いっちゃったね?」 「……、さいてい。ばか」    まだどこかぼんやりとしながらびくびくっと身体を時折震わせる柚希をそのままに、今度は自分のズボンの前を寛げる。何とか立ちあがって着替え袋を乱暴にひっくり返してタオルを探そうとしてた柚希の腰を、今度は後ろから掴み上げた。 「柚希の中に、僕も入れて?」  片手で柚希の腰を掴んだまま、片手は柚希の手を長机に磔にして後ろから覆いかぶさる。 「え……、カズ! やあ、ん、、あああ!」  そのままはちきれんばかりだった充溢を柚希の後孔に宛がうと、一気に中を貫いていった。立ったままこんな風に柚希を犯すのは初めてのことだ。いつもと勝手が違う場所を思う様すり上げられ、柚希は自分で快感が逃せないようで長机にしがみ付くように喘いで腰を揺らめかせる。 「柚希の中、熱い……」 「カズ、やあ、深いのっ、だめぇ」  熱く蕩けるように絡みついてくる柚希の肉襞を堪能した後、それは引き抜く際もみちみちと和哉自身を舐め上げてくる。堪らない刺激に耐えながら腰を振れば、柚希は嗚咽交じりの嬌声上げてさらに和哉を締め上げてくる。  その柚希の唇から指をねじ込んで指で上顎をなぞれば、明らかに感じてしまってさらに身を震わせる柚希が可愛い。 「ああ、もう……。クソっ、もたない」    いつも以上に柚希に翻弄され、白い尻に腰を打ち付ける破裂音を激しく打ち立てながら和哉は高みを目指して駆けのぼる。和哉の身体の下で柚希も小さく「いく、いっちゃう……」と漏らして二人がそろって欲望を吐き出した。    ちょうどその瞬間。  会議室の扉がノックされたので、柚希のいったばかりの内襞がぎゅうっと強烈に和哉を締め上げてきた。 「くっ、柚希ちょっと緩めて」  汗でしとどに濡れた柚希の襟足と首の付け根に口づけると、柚希は嫌々をするように首を振る。  和哉は大きく息を吐くと、「ちょっと待ってください、今着替え中です」とやや欲に掠れてセクシーな声で呼びかけに応じた。  「あー。お着換えしちゃいましたか? 記録も兼ねて写真撮りたかったんですけど」  声を聞いたら南だと分かり、和哉はぐったりとした柚希のこめかみに口づける。 「……30分ぐらい待っていただけますか。もう一度着ますので」 「また後できますね」  南が遠のく時間を測りつつ、そのまま柚希の口元を手でふさぎ、残滓を注ぎ込むようにねっとりとした動きで残滓を中へ擦り付けるように腰を振る。 柚希は息絶え絶えで、和哉に揺さぶられるがまま、気をやりかけて机の上にその身を預けた。 ※※※ 「……お待たせしました」  和哉が狼騎士の扮装に着替えなおして扉を開けると差し入れ用の紙袋を両手に抱えた南が二人を見つけて嬉しそうに手を叩き、彼女特有の喜びのつまった甲高い笑い声をあげた。 「ごめんなさいね~ また着替えてもらっちゃって」  幸い手持ちのタオルや休憩スペースとしてウェットシート等が置いてあったので、和哉はぐったりとした柚希の身を清めると元通りの恰好をさせるに至った。しかし柚希は先ほどのやり取りの余韻が抜けず、未だにどこか虚ろな様子で椅子に腰かけている。 「差し入れはここに置いて置かせてもらっていいかしら? ぎりぎりまだ日が落ちてないから屋上で写真撮ってもいい?」 「もちろんです。ね、柚希」 「はい。……よろこんで」  最近は日の入りがどんどん早まってきている。南の後ろを歩く二人は手を繋ぎ、廊下の電気を灯しながらところどころ荷物が置かれて邪魔な階段を上がっていく。4階建ての建物だが商店街ではマンション以外ではのっぽの方だ。  屋上の鍵はかかっておらず、出てみると大分日は傾いて頬を抜ける風も冷たい。 「どっちむきがいいかなあ。後ろのマンションが入らないそっちがいいかな。あ、でも逆光にならない方がいいか」  南に立ち位置を決めてくれたので柚希の手を引いてたち、寄り添いながら和哉は柚希の腰に手を回した。そうでもしないとまだよろけそうになる、危なっかしい動きをしていたからだ。 (王子様、顔が色っぽすぎますよ)  そう和哉が突っ込みたいほど、柚希は事後の余韻を引きづったほんのり赤い頬をして、ふわふわのとろとろの表情をしている。  こんな顔誰にも見せたくないし、写真に残るのは和哉としては非常に不本意だったが南には商店街皆でお世話になっているので仕方がない。  柚希の腰を抱いていないとよろけそうになるので密着度満点の写真が撮れてしまったが、今はまだ終始ぼんやり気味だったのであとから気がついて大騒ぎしそうだ。 「アコさん、さっきは和哉が急にあんなアドリブ入れちゃってごめんね」  華奢な南はほっそりした手に構えた一眼レフカメラのフレームを覗い込む南に向かって柚希は小さく頭を下げた。彼女は大き目のお団子頭を振る。 「いいの、いいの。私的にはすんごく嬉しかったよ。二人ともその恰好似合いすぎだし、麗しすぎたし。騎士の叙任式生で見られるなんてそんな機会ないからね~。今夜夢に出てきて欲しいぐらい興奮したわ。まあ会場は大騒ぎになったし、質問攻めにあったけどね」 「ですよね……」 「あはは。あの和哉君目当てのプリンセスたちにも聞かれたけど、二人は本物の番同士なんですって説明しちゃったけど良かったよね? まあ見てれば分かると思ったけどさ。二人はただならぬ雰囲気出てたからさあ。言い訳しない方がいいと思って。酒屋の若旦那も泣きそうだったよ~ 絶句してたわ。彼一ノ瀬君のこと大好きだもんね」   (若旦那にも伝わったか……)  柚希は誤解が解けたとほっと安堵し、和哉は情けない顔を拝んでやりたかったと残念に思った。 「はいはい。二人で向かい合って見つめあって~! そうそう。良い表情! 結婚式の写真でも撮ってると思ってちょうだい」 「あはは。やめてくださいよ。恥ずかしいですから」  興奮気味に煽られて逆に恥ずかしくなって笑いが止まらなくなった柚希の笑顔が可愛い。和哉は後で写真をチェックするとか名目をつけて見せてもらって、ベストショットを必ず貰おうと心に決めた。 「いいの! 私の中でもね、狼騎士と黒猫王子は番なんです! 設定上なんら問題ありません!」 「そうなんですか?」  そうよ~。といいながら南はにっこりと笑って少しずつ暮れていく茜空も何枚かぱちぱちと写した後でカメラを下ろした。 「そもそも私の中で黒猫王子のイメージは最初から一ノ瀬さん! 狼騎士のモデルは和哉くんです! 私が妄想の中で推し続けてきたカップリングが現実でも奇跡的に番になって、私得すぎる展開で、滅茶滅茶嬉しかったです!」 「妄想って、アコさん……」 「だってさ、誰が見たって和哉君が一ノ瀬さんにべたぼれだったのは見てれば分かるでしょ。周りへの牽制半端なかったし。アルバイト先でもないのにボランティアでお兄さんの職場の手伝いして。いじらしいったらなかったもの」 「俺たちの事、そんな風に見えてたんですね」 「振り向いてもらえてよかったね。和哉君」  それは柚希のへにゃりとした笑顔を誘ったが、和哉は別の意味で感心していた。 (そうか南さんって柚希のことが好きだったわけじゃないんだ)  南は初めて会ったころから柚希に興味津々な様子だったから、和哉はあえて兄と直接かかわらないように間に入って邪魔をしまくったという身に覚えがある。  申し訳なかったと思う和哉だが、そういった和哉の数々の牽制行為を柚希への深い愛情だと認識した南は南で大喜びしていたのだから互いにとって幸いだったと言えるだろう。 「結局一ノ瀬さんだって心の底ではこうなることを望んでたんでしょ? じゃなきゃ一生涯縛られる番の契約をするはずないでしょう?」  そういわれて。 柚希の頬に傾く秋の日差しに光る、透明な雫が零れた。驚く和哉と南の前で、柚希は耳が揺れるほど大きくこくんと素直に頷いた。 「そうです。俺は和哉の事、大好きだから番になったんです」    他人の前でこうもはっきりと柚希が自分の思いを打ち明けてくれたのは初めてで、和哉は思わず傍らの柚希をなんの手加減もせずに、力いっぱい抱きしめた。 「うわ、カズ、痛いよ」 「柚希、大好き。愛してる。俺の番になってくれて、ありがとう」  いちゃつく兄弟の様子を微笑ましそうに見つめながら、南は再びシャッターを切る。 「だからさ、まあ。誰にはばかることなく幸せになんなさいな。お似合いだよ。君ら。二人の結婚式のウェルカムボード、私が描いてあげるからね」                                終

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