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第5話 対面 1/5
広いお屋敷の中に通されて驚く間もなく、「こちらが撫子様にお使い頂くお部屋です」と伊地知さんに連れて行かれた。
「お夕飯まではまだ時間がございます。日用品などはこちらでご用意させて頂きましたのでご確認ください。必要なものがありましたら何なりと申し付けてください」
「はい」
広い室内は絨毯が敷かれ、全体をオフホワイトで統一された柔らかい感じの部屋。
可愛らしい装飾の施されたタンスと机、本棚。花のすかし模様の入ったレースのカーテン。
女の子がいかにも好きそうな部屋ではある。
『女の子』であればだけど。
「失礼いたします」
不意に伊地知さんとは違う声がして振り返った。
そこにはエプロンをした年配の女性が立っていて、「お茶をお持ちしました」と言って頭を下げた。
「撫子さん。この方はこの屋敷で長年働いておられる日吉恵美子さんです。身の回りの世話は彼女に頼むといい。私では何かと不都合もあるでしょうから」
「よろしくお願いいたします」
身の回りのこととなると女性同士の方が気兼ねがない。だけど、僕の場合はそれも困る。自分の事は極力自分でしたい。だけど、ここではそうもいかないのだろう。一瞬の隙も与えてもらえないことに一層身を引き締めた。
「こちらこそ。柊撫子です。よろしくお願いします」
慌てて頭を下げると、「仲良くさせて頂きましょうね」と微笑んだ。その笑顔はとても安心感を与えた。
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