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第17話 情事の跡 1/17

朝起きると……起こされたんだけど……。 「おはようございます」 「………ひっ……ざいますっ」 目を見開いて慌てて布団を引き上げた。 「……ああ、鷹。おはよう」 目を擦りながら伊織さんは起き上がって、ベッドの足元に立つ伊地知さんに挨拶をした。 大人だけど……可愛い。 「社長。急いでください。午前中の会議は9時からです」 「ああ……そうだね。隼人? おはよう」 座っている僕を引き寄せるようにして胸に寄せると頭にキスをした。 「ち、ちょっと……あのっ……まって……」 「ん? 落ち着いたら? 大丈夫?」 のんびりとした口調で言われて何度も頷く。 頷いて近すぎるその距離に慌てて離れる。足元にはまだ伊地知さんがいる。 「鷹ぁ、後で行くから……」 「当てになりませんので今すぐ起きてください」 「いいじゃない。今日ぐらいさぁ」 伊織さんは離れようとする僕を引き止める。 「いけません。ほら、撫子さんも着替えてください」 「……あ、うん。だけど……」 布団の下は真っ裸だしここに着替えはない。横を向くと伊織さんも服を着ていない。 それに『撫子さん』って……。伊織さんはさっき僕を隼人と呼んだ。それは伊地知さんにも聞こえていたはずだし……。 「服はここに用意してあります。早く着替えてください」 伊地知さんが言ったとおりソファーの上には服がきちんと用意されていた。

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