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金平糖11 猶予がない事態に見舞われた男

 バシャア! とシャワーからお湯を角の手と洸の接着をしている個所に当てた。すると、固まったものもにぬるりと溶けていった。 「も。ぉ、降ります!」  洸の悲鳴に近い声を無視して角も「リビングはどっちだ?」と小松に聞いた。びく! と小松も身体を大きくビクつかせて「こっちです」と小走りに二人を案内をし、その後ろから円もついて行くのだった。 (も~~降ろしてくれぇええ!)  声に出せない悲鳴が洸の中で響く。  耳まで赤く涙目の彼を円も顔を覗き込む。 (めっちゃくちゃ。可愛いじゃないの)  脳も目すらも濁って腐ったようにうっとりと洸を見つめている。  それに角も気づいたのか。小走りに向かう。突然の角に「っち」と円もついて行った。 「あ。忘れてた! ちょっと! バスタオルとか着替えを持ってきます!」 「ああ」  シャワーで下半身がびしゃびしゃの洸。  そのお湯を浴びている角の後ろも濡れている。 「角先輩。本当にすいません」と洸も謝った。  学校からここまで自身なんかをおんぶし続ける角に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 「別に。そんなに重くなんかない」 「いや。オレ、こうみえて体重は」言いかける言葉を「気にするな」と角が遮った。  そのやりとりをやきもきして見るのは原因をつくった加害者の平。 「兄貴。言っとくけど洸は僕のだから!」  マウントをとる。  そんな弟の態度に角も彼の顔を見下ろす。 「は?」 「は? じゃなくて! 僕の恋人なの!」 「一回。:犯(や)ったくらいで恋人気どりなんか気持ち悪いだけだろう? なぁ、船橋」  思いもしない角からの確認の言葉に、 「恋人なんかじゃない、し」  しどろもどろと言い切る洸に「っそ、そんな!」と平も涙目になった。 「っじゃ! じゃあだよ?」  くるん、と角の前に立ち洸と面を合わせた。 「どうやったら恋人になれるんだ!」  いっぱいいっぱいの顔で平は洸に聞く。  その態度と言葉に洸も困惑しかない。  角の言葉を借りるのであれば。  一回と無理やりねじ込んだくらいで恋人気どりをされたくなんかない。  告白もなしに恋人になったつもりなのか? と。  確かに平はイケメンだ。それは洸も認めるところで。  面食いである洸のとって嫌いなんかではない。だが。待て!   「友達でもないのに、……恋人なんて、無理に決まってんだろう。性格とかも知らないし、オレは松本平って名前とサッカー部の部員としか知らないんだ、から」」  昨日まで赤の他人で、今日は無理やりと犯されて恋人気どりは。  色々とおかしいだろう。 「それにお前だって。オレのことなんかし――」 「姉たちがいて末っ子長男。好きなものは甘いもの。犬派。友達は、松重小松」 「え」 「僕は……知ってる。調べたから」 「えぇ」  平からの身辺を調べたという告白に洸のドン引きしてしまう。 「ずっと前から僕はっ」 「待て」 「? なんだよ兄貴っ」 「この状態でよくも告白出来るもんね。恥知らず」  円がきっぱりと吐き捨てた。 「お前がしたことは最低最悪の犯罪行為よ。その後の告白なんかきっしょいだけでしかないでしょう」 「え!」と平も洸を見れば、目を反らされてしまう。 「時間が必要なんだ。それだけ酷い真似をしたのだからね」  がくりと平も項垂れてソファーに座った。  そこへ、バスタオルを二枚をぱたぱたと持ってくる小松の姿があった。 「お待たせしました! これを使ってください! あと、合うズボンはないんですが」  申し訳ない顔を向ける小松に、 「大丈夫だ。今日は替えのズボンがある」  角も頷いて洸をようやく降ろした。  解放された洸もバスタオルを受け取ってズボンを拭く。しかし、その中のパンツもびしょ濡れだ。  お湯とそれでない:精液(モノ)で。精液に至っては身体の奥にまで残っていて、お腹の中もどことなく熱い。 (ぉ、お風呂に入りたいぃいい!)  中のものを掻き出したい。その衝動も抑えられない。  立った瞬間から、今にも中から垂れて出てしまいそうだった。もじもじと。  だから、今は座ることも出来ない。ソファーを汚してしまう。 「どうかしたの?」  小松も首を傾げて洸に聞く。 「ぃ、や。あのぅ」と言い憎そうに口籠る。  そして、平を睨んで唇を突き出した。  睨まれている平は項垂れたままで気づいてなんかいない。  角と円は「あぁ」と見つめ合う。 「じゃあ。オイラたちはこれで」 「うん。ほら、帰るよ! 平!」  円の言葉に力なく平も頷く。ソファーから立ち上がった彼の表情は蒼白だ。  同情はしないが。自身のことでそれほどまでになるのか、と。  ほんの少しだけ言い過ぎたかなと平たちを洸も見送った。  ようやく。  静寂と二人きりになったところで。  立ったまま「こまつぅうう~~」と洸も咽び泣いた。  どうしてこうなったのか、小松も聞いた方がいいのかと悩んだんのだが。  ここはあえて聞かないことにした。言いたくなったら洸も言うだろうと。 「何?」  優しく小松も聞き返した。 「お風呂に浸かりたいぃいい!」  洸の叫びに小松も「はいはい」と浴室へと向かい、リビングに洸が1人きりになった。  今日はなんて日だったのか。どうしてこんな目にあってしまったのか。  こうなったのは――磯部リョーマのせいだ!  原因は彼だと洸は怒りに震える。自身の興味心から出た錆だというのに。 「お湯が沸くまで待っててよ」 「小松!」 「? はい?」 「絶対にリョーマなんかと付き合うなよ!」  強張った表情で言われた小松も「ぅ~~ん」と腕を組んだ。  何かに悩んでいる小松を他所に、手渡されたバスタオルを持ちに濡れてしまっているズボンをベルトを外して下ろした。そして、足でぽい! と放り投げた。濡れていて気持ちが悪かったからだ。 「行儀が悪い子ですねー洸くんはー~~」  小松も投げ捨てられたズボンを拾う。洗濯して乾燥をしなければ、明日もある登校に間に合わない。 「パンツと靴下も洗っちゃうから頂戴」 「あ。はい、すいませんね」と苦笑してパンツと靴下も脱いだ。  下半身に何もなくなった状態の洸を小松も見る。 (めっちゃくちゃ。キスマークあるんですけど)  友達に何をしてくれてんだ! と平に苛立った。しかし、そのキスマークに洸は気づいてはないな。恐らくは、全身にあるであろうキスマーク。 (どうしてくれようかな)  その全てをどうにかしたいと、邪にも小松は考えた。 「あ。頼むな」と下半身にバスタオルを巻いて、ゆっくりとソファーに坐る。心もとない。いつ漏れるか分からない状態なのは洸が一番わかってはいるのだが。悩ましい。どうしたらいいのか、中出しをされた精液の処理方法が分からない。  洸は携帯を取り出して検索をした。 【中出し 男同士 精液の出し方】  なんて、ある訳ない――あった。  それには洸も驚いた。あるのか! と。 「えー~~っと? 指を肛門に突っ込んで掻きまわして、力んで押し出す……って!」  こんな真似をしないと出せないのか! とわなわなと全身が震えた。  あの馬鹿は何をしてくれたのか。:犯(ヤ)るだけ犯って放置をしたのか!  そこは身勝手に中出しをした平がきちんと処理なりきれいにしておくべきだったはずだ。平に怒りが沸々と溢れ出しそうだ。次に顔をみたら殴ってもいいとさえ思う。  犯した後で平もそれどころではなかったことを洸も知らない。 「こんな:真似(こと)をオレはしなきゃなんねぇの? ん? えぇっと?」 【腸の奥に相手が中出しした精液を出さずに残すと腹痛が起きる。早く、掻き出しこと】 「え! 早く掻き出さないとヤベぇの!?」  全身の血の気が引く。  早くも何も、ここは自宅ではない友人の家だ。  しかし、一刻も早く。身体から平の精液を掻き出さなければお腹がヤバい。  何がどうして腹痛が起こるのかなんて分からないが。検索通りにしなければ!  猶予がない。 「さぁ。お風呂が沸いたよー」  満面の笑顔の小松に真顔を向ける。  その神妙な表情に小松も「ど、ぅかしたの?」と聞く。 「った、頼みがあん、だけど」  もうこれは家主に言うしかないと洸も恥じらいつつ伝えた。洸からの思いもしない頼み事に小松も、ガッツポーズを心の中でしてしまった。 「何かなー?」

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