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金平糖10 キラキラな訪問者と複雑な家主
(なんだってこんなことに)
松重小松の家庭状況は傍目から見れば複雑だが、理解してしまえば簡単な話しだ。
父親も母親も同業者。芸術家。故に各々には【時間】が必要だった。
時間は時間でも。恋人の時間や家族の時間、ゆっくりと落ち着いた時間ではなく仕事に集中をする時間である。そんな彼等。夫婦の間に産まれてしまった小松にしわ寄せがいくのは時間の問題であった。
世間の子どもにとって漫画のような家族とは暮らさない子どものように、とても都合よく一人暮らしを小学生から強いられた。その以前は親戚の家をたらい回しにされ転々と過ごした。だが夫婦のスランプや時間にゆとりがとれれば、その期間はどの家にでも滞在は出来て、普通の家族の時間を得られたが――それは瞬きをするかのようにあっという間に終わる。元の生活に小松は戻るのだった。その会える時間で得たものは観察眼と洞察力に色彩の塗り方。
小松は習得した技術を有り余る一人暮らしの中で開花させ、夫婦と同じ芸術家の路へと進むのだった。
夫婦は複雑だった。だが、なるべくしてなったことと今さらと親面をするのは止そうと互いに約束をした。
それからは何かにつけ家に荷物が届くようになった。
キレイな色の絵の具。
手触りのいい紙。
風景画に役に立ちそうな風景の写真集。
気がつけば小松の一階一室は夫婦のような芸術家 ばりの雰囲気となった。
その部屋に小松も籠り、
「…………」
一心にキャンパスに絵を描き色を塗り時間を忘れ描き続けるのだった。
気がつけば生活に一筋の光明が差した。
ただ楽しかった。そして、嬉しくもあった。
両親と同じことを出来ることと、共通の話しが出来たことが小松には嬉しかった。
「さすがはアトリエ兼家って感じじゃないか」
「そうだな」
円と角が小松の家の大きさに感心な声を吐く。
「じゃあ。ここで洸を預かりますので」と家に上げたくない小松が角へと言うのだが。
角が顔を左右に振る。
その仕草には「?」またも小松は顔を横にさせた。
「手に精液がついて硬くなっていて糊のようにくっついている。このまま下ろしたときオイラの甲の皮も剥がれちまう。だから、お湯をかけて溶かさなければならない。家に上がらせてくれるよな?」
低い口調の威圧に小松も。
「で、スネー~~」
家へとエスコートをせざるを得なかった。
小松の家は将来的にも住めるようにと三階建てだ。
一階のアトリエ。二階三階の居住地。
二階に行く階段は凹凸のない真っ平らなもので洸を背負う角には丁度いいものだった。
「持ち家だなんて。老後も安心じゃないか」
円が小松に話しかけた。
「はぁ。ですね」
眩しそうに目を細めて頷く小松に、
「早く慣れろよ」
洸も苦笑する。
(そんなことを言われても)
小松はため息を吐いた。
やはり、この状況が飲み込めない。
しかし、洸が何かをした結果がこれなのだろうと元凶を見定めていた。
だからこそ。
ちゃりん、と鍵を回した。
その扉は一階ではなく二階への向かう用のもの。普段は使わないが今回は、そこから二階に上がるべく開錠をした。久しぶりということもあり、どの鍵だったかと不安もあったが、一発で開いたことに小松も安堵の息を小さく漏らした。
何故、松本家がいるのかが分からなかった。平だけならまだしもだ。
本当なら一階からも行けたのだが、アトリエに入れたくなかったので二階へと案内をした訳だ。そのことを洸も察してあえてツッコまなかった。
「ではどうぞ」
作り笑いを浮かべて小松は室内へと手を向けた。
「うむ。まず風呂場はどこか案内をしてくれないか」
「あ。はい」
どたどたと室内の中に消えた三人。
残された円と平は「置いてかれたな」「ですねぇ」と互いを見据えてボヤいた。
「とりあず。ついて行こうよ、姉貴」
「そうね。そうしましょう」
そして、二人も中へと足を踏み入れるのだった。
バリアフリーで洸を背負う角には有難かった。
しかし。
(もう終わりなのか)
背中に寄りかかる重みを手放さなければならない。
精液が固まりくっついている手の尻の感触も、もう時期と手放さなければならない。
背負っている彼は、可愛くもないが実の弟の想い人。
今まで同じサッカー部でありながら存在は知っていたが関わったことも、2分と会話もしたこともないし、きちんと顔も見たこともなかった下級生。今更ときちんと顔を見て。弟との性交を偶然にも出羽亀をしていまい股間が勃起してしまったことに驚きが隠せない。
自身にもこんな性欲があったのかと。
手放してしまえば。
また接触もなく。関係ない関係に戻ることになる。
だって彼は――【赤の他人】だから。
友達でもないのだから。
何をどうしても触れ合えない相手。
ズキズキ――……
(股間が痛い)
「あ。靴は脱がないでいいですから。マットの上で泥なんかを拭いてください」
「ああ」
「風呂場はこっちです」
「分かった」
どうしたらいいものか。
犯したい。
中に有る平の精液なんかを塗り替えるように種付けをしたい。
角の脳内は厭らしいことで一杯だった。
悶々とする顔を洸も横目で見ている。
(やっぱ。オレなんか背負ってるから重いよなぁ)
眉間にしわを寄せる顔は辛そうに見えたのだった。
洸も、申し訳ない気持ちで一杯である。
重い空気に。
(何なの! この状況はっ!)
小松は音を上げていた。
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