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第1話

「委員長、ちょっといいか」 高校二年の春。たまたま出席番号が一番だったからか、たまたまちょっと頭がいいからか選ばれてしまった『委員長』の俺は担任に呼ばれた。 「先生、なんですか」 「いやぁ、悪いんだけど市川の家にプリント届けてやってくれないか」 ーーなんで俺が……。 心の中で悪態をつきながら、ニコニコと返事をする。 「いいですよ、でも確か市川君て体調不良でしばらく休んでるんですよね。それなら俺より仲良い友人の方がいいんでは……?」 「あぁ、最近退院したらしい。今は自宅で療養中でな。後なんでか知らんが委員長指名なんだ。まぁよろしく頼むよ」 「はい……」 正直、めんどくさい事この上ない。だけど大学の推薦を狙っている俺はここで頼れる人間アピールをして内申点を上げなければならない。 「まぁ、プリント渡して帰るだけだからいっか」 そんな気楽に考えながら帰途についた。この先起こる事に気付かずに……。 ♪ピンポーン 人差し指で市川の家のチャイムを鳴らす。しばらくするとガチャガチャと鍵を外す音が聞こえて扉が開いた。 「委員長!待ってたよー」 ドアを開けたのは金髪頭の小柄な少年。目的の人物•市川遼。 「市川君、体調はどうですか?」 貼り付けたような笑顔で返事をすると鞄からプリントを取り出した。 ーーよし、これを渡したら帰れる。そうだ帰りに本屋寄ろっかな。 「これ、先生から頼まれもの」 プリントを差し出すとガッと勢いよく掴まれた。プリントではなく俺の手を。 「委員長、俺相談したい事あってさー。まぁちょっと上がってってよ!」 「えっでも……」 「お願い!この通り!委員長にしか言えなくて……」 両手をパンと合わして深々と頭を下げてくる。 ーーおいおい、俺市川とそんな仲良くないんだけど……。まぁでも、ここで良くしておけばこいつが復帰した時、先生に感謝されるか。 少し悩んだ後、俺は市川の申し出を受けていた。 「俺で良ければ相談乗るよ!」 ーー俺、めっちゃいい人! 目の前には冷たい麦茶。ここは市川の部屋らしい、全体的にモノトーンで纏められていてなかなかお洒落な部屋だ。 「で、市川君相談って?」 早く話を終わらせたい俺はラグの上に座ると笑顔で話を促す。 すると、市川は胸に手を当ててスーハースーハー深呼吸し出した。 「委員長、あのさ……実は、俺ゲイなんだ」 ーー……。あーそういうこと!そりゃ友達には言えないな! 「あー市川君。そうなんだね、少し驚いたけど世の中にはそういう人もいるって知ってるし俺はそんなことで……」 「委員長!」 当たり障りない励ましで終わらそうとした俺の話を市川は遮った。 「委員長、あの、俺と付き合ってください!」 突然立ち上がって今度は片手を俺に差し出しながら頭を下げてきた。 ーーえー、これ告白?握手し返したら付き合うの、俺?

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