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第1話

「別れたい…」 そう泣きながら懇願しても別れてもらえない… 好きでもないのに断れなくて付き合ってしまったのが悪かったのだろうか…   とにかく俺は男運がない。そもそも好きという感情がわからない。でも同性しか愛せないという俺と同じ人に求められたら好きでもないのに応じてしまうのが俺の普通になってた。付き合えば情は湧く。けれど好きかと言われたら好きだけど多分世間で恋人に言う好きとは大きく違う。 その日は休日出勤でとにかく客が多く予定の時間に帰れず疲れていた。 長く付き合った恋人とも別れたばかりで精神的にボロボロになっていた。 帰宅中の俺に声をかけたのはかつて同僚だった男だった。 俺は彼がとても苦手だった。 獲物を見つけた蛇のように舐め回して見てくる視線が苦手だった。 世間的には彼はイケメンと言われる部類だったとは思う。 人を褒めるのが得意で調子乗りでけれど仕事は良く出来るやつでいい意味で目立っていたのだ。 周りにもそいつの印象は良かったけどどうしても俺は好きになれなかった けれどあの日俺はどうかしてたんだ。 2年ぶりに再会してからというもの毎日のように待ち伏せされて付き合って欲しいと懇願された。 それがすごくしんどくて…けれど俺が同性しか愛せないことは周りに言っていないから誰にも相談ができなかった。 そしてあの日俺は自宅に無理矢理上がり込まれそのままそいつに組み敷かれたのだ 泣いても喚いても許してくれなかった。付き合ってくれるならやめると言われ思わず頷いてしまったんだ。 「やっとお前の弱いところが見えた。辛かったんだろ?」 そう言いながら俺を抱きしめ頭を撫でてくれた。 苦しくて涙は止まらなくてけれど断る勇気もなかった その日から彼はうちに居座るようになった。仕事もしていなくてかと言って探す気もない。今どきスマホも持ってなくて家でダラダラと過ごしていた。俺が家にいれば一日中外には出してくれなくてひたすらに俺を求めた。 彼はすごく嫉妬深く俺の行動も全て知っておかないと気がすまなかった。俺の行動を把握するために俺の名義でスマホも買った。勿論支払いは俺だ。 毎日のスマホのチェックは欠かさない。元々入っていた連絡先はすべて消されてしまった。 「なぁ。今日は何時まで?」 「今日は遅番だから帰宅は21時過ぎになるよ」 「そっか…じゃあ飯作って待ってるな」 そう言って俺にキスをして送り出してくれる。 毎朝同じ会話。何となく慣れてしまってた。 その日は仕事で必要な書類を忘れたことに気付き昼休みに一旦帰宅したのだが帰ってきて玄関を開けると見知らぬ女の靴と甘ったるい香りそして甘い声が聞こえた。 一旦冷静になろうと玄関を閉め外に出て一つ深呼吸して…もう一度開けて…けどやはり状況は変わらない 人の家でこいつは何をしているんだ?… でも馬鹿な俺はこいつと別れたら次はいないと思って何も言えず真実を確かめず取り敢えず書類だけ持って会社に戻った。 「お疲れ。書類あったか?」 「あ…ありました。」 上司に書類を渡しお辞儀して立ち去ろうとすると呼び止められた 「何か不備がありましたか?」 「いや。完璧。まだ、時間あるしちょっと付き合え」   よくわからないがついていった

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