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第24話

「ぅ…え、げほっげほっ…」 おかしい。 こんなのおかしい。 落合は涙と吐露物で汚れた顔を雑に拭うと、便器に身体を預けて項垂れた。 辺りに散乱したトイレットペーパーの中に、一本だけ注射器が転がっている。 Ωの発情期を抑える特効薬だ。 よほど薬が合わない体質でない限り、副作用は激しいものの発情自体は抑えられるのに、龍樹と接触して突如始まった落合の発情期は一向に治らなかった。 落合は元々かなり薬との相性はいい体質で、常飲しているピルだけでなんら問題なく生活してこれた。 特効薬を使ったのだって、もう何年も前、初めての発情期を迎えた時だけ。 それが、どうしてこんなことになっているのか。 落合には答えがわかっていた。 「たつき、くん」 キス、して欲しかった。 思い出すと、またジワジワと熱が込み上げてくる。 特効薬の副作用でガンガン鳴る頭の中が、卑猥な妄想で埋め尽くされて、それ以外考えられなくなって。 嫌がる素振りはしたものの、あのまま抱かれたってよかった。 少なくとも身体はそれを切望していた。 あのまま服を剥がれて、暴かれて、貫かれて、そして噛まれて彼のものになりたかった。 それが本心なのか、ただの本能的な衝動なのか、そんなことはどうでもよかった。 ドクン、と大きく身体が脈打ったのを感じて視線を落とすと、何度も欲を吐き出した筈のものが再び熱を持って自己主張を始めていた。 もう何回射精したか覚えていない。胃の中が空になるまで吐いて、頭は割れそうに痛い。 指一本だって動かしたくないほど疲弊しているのに。 ほとんど無意識のうちに、それを握った。少し刺激してやるとあっという間に硬度を増してさらなる刺激を求めて震えている。 浅ましい身体。 なまじ薬と相性が良くて発情期を普段経験しないからこそ、その嫌悪感は凄まじかった。

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