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第13話

 彼はローストビーフを指でつまんで食べ、俺にも食べさせてはワインを飲み、時々キスをして体に触れてくる。 「傷になってる」  右腕の傷あとは酒が入るとうっすらピンク色になる。 「ああ。キャンプの時、木の枝で切ったんだ。友達がふざけて振り回した枝だったから、そいつめちゃくちゃ怒られて、俺は病院連れて行かれて縫ったんだ」 「いつの話?」 「小三。カレー食べられなくてつまらないって思ったの覚えてる」 「カレー?」  不思議そうな顔をする彼は、日本のキャンプの定番料理がカレーと聞いて、ますます不思議そうな顔になる。 「日本人のキャンプなのにカレーなの?」 「うん。小中学生のキャンプでカレーじゃないなんて聞いたことない」 「へえ。日本料理じゃないんだ」 「日本料理って?」 「んー。天ぷらとか? 鍋とか?」  どんなキャンプだ。というか、カレーってすでに家庭料理の定番だしな。でもそんなこと知るわけないか。きっと高級な日本料理店しか行ったことないんだろう。 「好きな日本料理ってある?」 「寿司と天ぷら。あとスイーツ」 「スイーツ?」 「ケーキとかタルトとかパフェ。あ、和菓子もおいしかったな」  こんな男前がにこにことケーキを食べる姿を想像すると、なんだか微笑ましかった。 「日本に行ったことがあるんだ?」 「何度かね」 「へえ。どうだった?」 「きれいで明るくて人が多くて楽しい国だ。日本人は親切で勤勉。料理はなんでもおいしい」  日本の印象は相当いいようだ。 「特に日本のスイーツは最高。見た目も味も素晴らしい」  そんな会話を楽しみながら、髪を撫でたりうなじにキスしたり、指で腰骨をなぞったりとじれったいほどのやり方で徐々に俺の熱を上げていく。でも帯は手首に巻きついたまま外してもらえない。  口元にチーズが出され、俺は口を開けて入れてもらう。したたったハチミツを唇に塗りつけられて、それからキスされた。 「甘いな」 「ハチミツだから」 「いや、君が。ほら、ここも」  そう言いながら俺の浴衣を大きくはだけて、胸にハチミツを落とした。ねっとりとしたたるのがくすぐったくて身をよじる。

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