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第5話
久しぶりに会った彼は相変わらず朗らかに笑い手を振って車から降りてきた
車はあの四駆では無く軽自動車になっていて仕事で使うものが沢山乗せられて…そして…
「ごめん!助手席は乗せられないんだ」
恋人でも出来たのだろう…俺では叶わなかった事を他の人が…そう思うと胸が痛くて泣きそうになるのを必死で堪え笑う
「恋人でも出来た?」
「そんなんじゃ無いよ。でもだめなの」
真実はわからない。けれど隣は俺じゃ無い。それは現実で…自分はもうとも君の知る状況では無いことを棚に上げ恨んではみるけれど結局その笑顔に何も聞けなくなるのだ。
「ほら!綺麗だよ!こっち来て」
そう言ったとも君の隣に行き満月をバックに写真を撮った。これが最後の思い出になる…
「とも君。話がある」
「ん?改めてどうしたの?もしかして結婚?」
「そう。先月ね」
「へぇ…おめでと…」
「ありがと」
「じゃあさっきの声は」
「うん」
「何かごめんね。呼び出して」
「ううん。会いたかったから…とも君。軽蔑されるかもしれないけれど…俺ね…やっぱり今も君が好きだ。けどさ…叶わない初恋を追いかけるのはもうやめる。俺は俺なりの幸せを生きてく。だからさ…君も幸せになってね…俺の思いは叶わなかったけれど君に出会えて本当によかった…大好きだよ。本当に大好きだ…」
笑顔で最後まで伝えられた…
「ねぇ…しーさん」
「ん?」
「本当に俺のこと好き?」
「うん…自分でも驚いちゃうけれど…大好きだよ」
「…好きだよ…しーさん」
「ありがと」
そのままそこで背を向けて近くでタクシーを拾い帰宅した。ただいま。そう言って玄関を潜ると彼がぎゅっと抱きしめてくれた。
「お帰り…しー…」
そのまま彼の胸の中で泣き続けた。
俺の初恋はこれでおしまい…
「しー?また感傷に浸ってた?」
「うん。大丈夫。行こうか」
俺たちは今日この街を出ていく。とも君と出会って恋をして終わったここを出ていく。もう戻ることはないだろう…
大切に仕舞っておいた携帯を置いて一歩踏み出した。未来へ向かって…
終
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