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第1話 二人のバレンタインデー
俺はここ数年、バレンタインのチョコレートを一つも貰っていない。
いい加減嫌気がさしたからだ。
数年前まではそれこそ嫌って程貰ってた。
高級チョコレートの詰め合わせから手作りまで。
多分、そこいらのアイドルにも負けないくらいに。
正直言ってチョコレートを一人でそんなに食べれるわけもなく、かと言って捨ててしまうのも勿体ないしで、いつも困って、あちらこちらに配って回ったものだ。
だから俺は宣言してやった。
「バレンタインにチョコレートを持って来るやつは彼女候補から外す」って。
それでも少なくない数の女の子がチョコを持ってやって来たが、「あ、君は彼女候補から完全除外ね」って優しく微笑みかけると、慌てて持っていたそれを隠した。
それから後は噂が噂を呼んだのかチョコを持って来る女の子はいなくなった。
これと同じ手を使って誕生日のプレゼントもクリスマスのプレゼントも全て避けることができたんだよな。
……でもまあ、ぶっちゃっけ俺は特定の彼女なんて作る気はもとからさらさらなかったんだけど。
だって周りには俺に好意をもっている美女たちがごろごろしていて、より取り見取り選び放題だというのに、一人に決めちゃうなんてそれこそ勿体ないとか思ってた。
少々、いやかなりか? 難ありの性格してたよなー……俺。
チャラ男なんて言葉自分に使いたくないけど、以前の俺ははっきりチャラかった。
そんな俺を変えたのは、あいつ。
父さんの再婚でできた新しい家族……一日違いの弟、陽馬。
最初は可愛いと思ってただけだった。
今どき驚くほど擦れてなくて世間知らずで。
色で例えたら真っ白……純白。
そんな彼をいろいろからかっているうち、気づけば初めての恋に落ちてた。
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