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第4話

 その夜。僕は君を抱えながらダイニングテーブルの椅子に座らせて……食事は摂れなかったけれど、一緒にお茶を飲んだ。  二人のベットにマットを重ね、クッションをたくさん置いて、久しぶりに一緒に寝た。  痛くない? と聞くと、慣れた場所は痛みも忘れさせる。遠慮なく君にくっつけるこの場所が、僕は一番好きだと微笑んで、体を僕に寄せる。  僕は君が苦しくないよう、なるたけ優しく包み込んだ。  もっと早く、こうしてあげれば良かった。 「あ……そう言えば指輪って、どこにある?」 「指輪……する? 持ってくるね」   指がすっかり細くなってすぐに抜けてしまうから、入院してからは僕が預かっておいた君の結婚指輪。  取ってきて見せると嬉しそうに左手を挙げた。 「……健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も……これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」  結婚式の誓いを思い出し言いながら、僕は君の指に指輪を嵌める。それから、指輪が落ちないように、指を絡ませた。 「……誓います。永遠に……生まれ変わっても、君にまた恋をして、君だけを愛し抜きます」 「……僕もだよ。必ず見つけるからね。必ずまた僕と、恋をしよう」 「うん。また初めから、全部教えてね……」  君は大きく息を吐いて、満足したように目を閉じた。僕は額にキスをして、朝まで君を抱きしめて眠った。  それから三日後。  君は僕と手を繋ぎながら、静かに息を引き取った。次の記念日には好物のカスタードクリームをたっぷり添えたパンケーキを作ってよ、なんて話しながら、眠るように目を閉じて。  とても、とても穏やかな最期だった。    君、僕に約束を果たさせてくれてありがとう──いや、まだ約束は続いている。  僕は毎日空に向かって君への愛を語ろう。記念日には花だけでなく、プレゼントとパンケーキも用意して遺影に供えよう。そして、僕の命が尽きて、新しい人生が始まったら……必ず君を探そう。  僕達はまた出会い、再び恋に落ちるんだ。    春の薄桃の桜も、初夏の爽やかな風も、真夏の眩しい太陽も……秋の高い空も冬の木漏れ日も、全部一緒に感じよう。何度季節が巡っても、僕らの初恋を紡ぎ続けて行こう。  僕の思いは永遠(とわ)に君のもの──僕の恋の全てを、君に捧ぐ──

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