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導入

今日もこの男はご機嫌である。 俺はちらりと出された紅茶を飲みながらお客さんに囲まれている男を見る。 綺麗な女性、かわいらしい女の子、その中に違和感なく溶け込む絶世の男。 平凡な茶色の髪だと言うのになんだかキラキラ輝いて、ふと俺の視線に気づいたのか緑色の瞳がこちらを見た。 ばっちり目が合うと男は蕩けるような笑みを浮かべるのである。 さながらそれは、好きな人を見つけたようなそんな表情だ。 しかし、そんなことはあり得ないと俺は知っている。 気まずくて視線をそらし、お茶菓子を手にしてちびちびと口にする。 彼の名前はユグド。 ユグドラント・ヴィシェール。 ヴィシェール伯爵家の長男である。 なぜ俺がこの男の家に厄介になっているのかというと、俺たちの浅はかならぬ関係を先に説明しなければならない。

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