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第8話
気がつくと、オレは空き教室の中で倒れていた。
あれ?
オレどうしてここに?
確か松若先輩が道籠先輩と歩いていったのをついて行って……それからどうしたんだろう?
全然思い出せない。
とりあえず腹減ったな……って、もしかしてオレ、メシ食う前に昼寝してた?
横に置いてある未開封の焼きそばを見て、オレはその場でひとり焼きそばを食べ始めた……。
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「繋先輩、ありがとうございます!!」
「今度ホテルに泊まりに行きますね!」
「ありがとう、待ってるよ」
ホテルで働き始めて、研修なんかも受けたりして、俺は前よりは人に接するのが苦手じゃなくなった。
「繋クン」
「あぁ、小早川先生、先程はありがとうございました」
見知らぬ後輩の女の子たちに頼まれて一緒に写真を撮っていた俺。
それが終わると小早川先生…ルシフェルさんが俺に声をかける。
「あれくらいはeasyデス。しかし雅美クンは大丈夫なのデスカ?」
「……えぇ、貧血になったといって保健室に運びました。これから迎えに行ってきます」
「キミもなかなかのBold actionするんですネ、繋クン」
「先生ほどじゃないですよ」
俺は笑顔のルシフェルさんに笑顔で応えると、保健室にいる最愛の妻を迎えに歩き始めた。
『新入生でオレにめちゃくちゃアピールしてくる奴がいて……どうしたらいいと思いますか?』
そんな話を雅美は俺にした。
俺が高校を卒業し、一族で経営しているホテルで働きながら通信制の大学に通い始めてすぐの事だった。
卒業を機に、俺は雅美に頼まれてふたりきりの時だけ彼の事を呼び捨てにするようになっていた。
『そうなんだ。困った新入生だね』
結婚してから2年が過ぎ、お互い少し見た目が変わったりもしたけど、俺の雅美に対する想いも雅美が俺に寄せてくれる想いも何一つ変わっていない。
むしろ、お互いしか見えていない時がよくあってチロやルシフェルさん、親戚にからかわれているくらいの仲だ。
卒業するまでは俺と仲が良い、将来結婚する相手が決まっている、という話で誰も雅美に近づかないようにしていられた。
けれど、その新入生にはその話を知らないのか、知っていても関係ない様だ。
俺は雅美に極力相手にしないように話をして、自分が行ける時は迎えに行くようにした。
そして、決めていたんだ。
ルシフェルさんに記憶を消してもらうけど、いつかそいつの前で雅美が誰のものなのか見せつけてやる、って。
その後、記憶を消された新入生は雅美への想いも忘れてくれたみたいで、雅美は大変な事もあったけど残り少ない学校生活を穏やかに過ごして卒業する事が出来た。
ん?大変な事って?
それはまたいつか話す機会があれば話すよ。
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