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第1話◇プロローグ
「は?……なにそれ、涼 」
オレに向けられる声のトーンが低すぎて、退く。
オレの目の前で、真顔で、かつてない位、低い声を出してるのは。
小山 蒼紫 。18才。
オレの幼稚園からの幼馴染。腐れ縁。親友。高校も一緒で、今は、寮の部屋も隣同士。
オレを、無理無理、芸能界にひっぱり込んだ奴。
「Cross 」という名前で、2人組の歌手として、一緒に音楽活動をしている。
身長181センチ。背、高くて、足長い。
誰が見たって、文句なしの凛々しいイケメン。涼し気な目元と、特徴のあるイケてる歌声に、世の女の子達は、熱狂してる。アイドルで売り出した訳じゃないけれど、アイドル並の人気が出てしまった。
で、まあ、当然死ぬほど、女にモテる。
とまあ。……蒼紫は、こんな感じの奴。
…………でもって、蒼紫はオレの、初恋の相手。
絶対に、ばらす事はないけど、今も続いてる、片思いの相手。
ずっとずっと、好きだけど。
死んでもばらさない。
ずっと、友達で居たいから。
でもって、その内、こんな想いは、忘れる予定。
蒼紫以外の男に興味はないから、オレはいつか女の子と付き合う。
そしたら、蒼紫とは、仕事のパートナーとして、一生付き合ってくつもり。
蒼紫は、オレにとって、そういう、相手。なんだけど。
10年以上の付き合いの中でも、聞いた事がない程に低すぎる声に、内心、すごくビビる。
あれ。何でこんな事に?
何、話してたんだっけ、オレ達――――……。
さっきまでの会話を、必死で思い起こそうと試みる。
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