2 / 62

第2話◇ことのおこり

 オレ、奥森 涼(おくもり りょう)。18歳。職業は、高校生と歌手。  「Cross」、蒼紫と音楽活動をしている。  歌も売れているし、一部女子には、アイドル並に人気がある。  色気があってエロい感じが好きなファンは圧倒的に、蒼紫につく。オレが良く言われるのは、全年代に可愛がられる可愛いイケメン、とやらで。  オレらが2人で居る事が、尊い……らしい。ちょっと良く分からないけど。  更に、もともとが幼馴染の親友とくると、そういうのが好きな女子ファンも、オレらを熱狂的に好きらしく。そういう変な人気もある、みたい。  正直、蒼紫に片思いしてるオレとしては、これはかなり複雑。  でも、そこらへん気にしなければ、仕事はとてもうまくいってる。  蒼紫とも、仕事を始めても、仲が良いまま。  日々、順調。  …………なんだけど。1つだけ、問題がある。  ただひとつ。  蒼紫の女癖が悪い。  オレが片思い中だから、余計に傷つくのだけど、それは死んでも言わない予定なので、それ以外の部分で、注意はしてるんだけど。マネージャーからも、社長からも言われるんだけど……。  今日は歌番組。リハーサルが終わって、蒼紫が先に楽屋に戻った。  オレがトイレを済ませて、ドアを開けた瞬間、目の前を通ってた(とも)さんにばったり会った。マネージャーの里中智己(さとなか ともみ)さん、通称智さんは、オレを見て、早歩きだった足を、止めた。 「あれ、なんか急いでる? 智さん」 「ああ、涼――――…… 蒼紫がまた……」 「……また?」 「……はい、これ」  智さんのスマホを見ると、蒼紫が女の子と写ってる写真。 「明日記事に出るって。 ちょっと社長と電話してくるから、先に蒼紫に言っといてくれる?」 「うん。わかった。……ごめんね、智さん、迷惑かけて」 「涼が謝る事じゃないよ。 蒼紫に反省してもらわないとだけど」  ふ、と笑う智さんに、「言っとくね」と言って、別れた。  楽屋の前にたどり着いて、超ため息。  もう。  女の子と居るとこ、スッパ抜かれすぎなんだよ。  もうちょっと、バレないように、できないの? ほんとに。  蒼紫がモテるのも分かるし、好きな子と遊んだって良いし、別に自由だと思うけど。オレ達は、アイドルではないから、別に恋愛がご法度な訳でもないし、良いんだけど。  でも、切ない恋の歌も歌うんだから、もうちょっと誠実に付き合ってた方がいいとは思う。しかも詞を書くの、蒼紫なんだからさ。とっかえひっかえとかしといてこの歌?て思われたら絶対マイナスだと思うんだよね。    ……ていうか、それだけじゃなくて。  ――――……オレも、密かに傷つくしさ。  誰か1人と真剣に付き合ってくれて、その子が良い子だったら。  もっと諦めも付くし、応援も出来るし。  勝手に受ける、ショックも、小さいと思うのになあ。  まあ。そこは、オレが、蒼紫に片思いなんか、勝手にしてるのがいけないので、もちろん蒼紫には言わないし、この部分の気持ちを付けくわえて蒼紫に言っちゃダメなんだけどさ。

ともだちにシェアしよう!