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第27話◇お風呂上り
着替える部屋に戻った時に2人きりだと、すぐキスしてくる。
可愛い、とか、普通に言ってくれちゃう。
……昨日まで、完全に片思いで、蒼紫に好きなんて言える日がくるなんて。
好きって言ってもらえるなんて。
もう想像した事も無いというか。願った事すら、無かったというか。
なんかもう、今の状況が、幸せ過ぎて、困る。
「思ってたより長くなっちゃったね。お疲れ、2人共。夕飯どうする?」
智さんに聞かれて、蒼紫を見上げると。
「弁当屋さん寄ってくれる? 寮の部屋でゆっくり食べたい」
「いいよ。帰る途中で寄るね」
蒼紫の返事に智さんが頷く。
「涼もそれで良いの?」
「うん」
「了解。忘れ物無いように荷物持って表に来て。車回すから」
「はーい」
てことで。
2人でお弁当を買って、寮に戻ってきた。
シャワー浴びて、蒼紫の部屋に集合、て事になったので、いったん自分の部屋に戻ってきた。
一昨日までだったら、仕事が終わって帰ってきたら、もうその後は蒼紫とはあまり絡まなかった。
蒼紫は外に遊びに行っちゃう事が多くて。
部屋訪ねて行って、居ないと、勝手にちょっと落ち込むから訪ねる事も無くなっていって。
――――……もしかしたら、仕事を始めてここに住んでから、プライベートでは、あんまり一緒に居られなくなっていたのかもしれない。
あんまり休みもないし、仕事の隙間に学校に行って、寮に送ってもらって、じゃあな、で別れて。
部屋にも誘われなかったし、誘う事も無かった。
だから。
今からまた蒼紫の部屋に行けると思うと、どう抑えようと思っても、ウキウキが止まらない。
昨日はまだ色々パニックで、蒼紫の所に行くの、なるべく遅くしたくて、シャンプー2回したりしてたけど。
今日は、早く行きたくて、速攻シャワーを終えた。
ドライヤーも適当に終えて、急いで蒼紫の部屋に行くと。
鍵は開いてた。
蒼紫、まだシャワー浴びてた。
「蒼紫ー」
バスルームの外から、声をかけると。
「涼? もう来たのか?」
「うん」
「早や。 昨日すげえ遅かったからゆっくりしてた。悪い、ちょっと待ってて」
「ん」
蒼紫のベッドの端っこに腰かけて、ベッドの上にあるクッションを、膝に乗せる。
嬉しい。
蒼紫の部屋で、蒼紫を待ってるの。
この瞬間だけで、なんかもう幸せで、嘘みたい。
シャワーが止まる音がして、バスルームから出てくる気配。
少しして、蒼紫がタオルで髪をガシガシ拭きながら、戻って来た。
「ごめんな、遅くて。良かった、鍵あけといて」
「ん」
寮は基本は鍵を掛ける事にはなってるけど、住んでるのは学校の仲間なので、不在時以外は空いてることも多いし――――…… ていうかそんな事より。
シャワー上がりの蒼紫。
――――……カッコイイなぁ。
髪が濡れてて――――……ほんとにカッコいい。
見つめていたら、ふ、とオレを見た蒼紫がくす、と笑って、近づいてきた。
「カギ閉めた?」
「あ、うん。閉めた」
「ん」
頬に触れられて、見下ろされる。
ほんと。カッコいい。蒼紫。
キレイ。瞳。
見つめ合ったまま、柔らかく、唇が重なって、キスされた。
「――――……風呂上がり、なんかめちゃくちゃ可愛い、涼」
ぎゅー、と抱き締められる。
「蒼紫……」
ふふ、と笑ってしまう。
オレも。風呂上がりの蒼紫、カッコいい、ってひたすら思ってた。
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