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第28話◇

「水?麦茶?」 「水がいい」 「ん」  優しいキス、何回かした後、よしよし、と撫でられて。  蒼紫が冷蔵庫に行って、飲み物を取ってきてくれた。  ローテーブル挟んで、向かい側に座るかなと思ったら、隣に並んで座る。 「――――……」 「ん?」 「隣、なんだね」 「くっついて座りたいから」  腕、掴まれて、引き寄せられる。  すごい近いし。  ドキドキしながら、蒼紫を見つめると、ちゅ、と頬にキスされる。 「たべよーぜ」 「ん」  お弁当の蓋を開けて、割り箸を割った。 「いただきます」  2人で食べ始める。  こんな近くで。2人きりで。 「オレさ、蒼紫」 「うん」 「――――……まだ、信じられないんだよね」 「オレも。願望が叶いまくった夢見てる感じ」  顔を見合わせて、笑ってしまう。 「分かる。夢かなーて、思う」 「ん。だよな。なあ、涼、唐揚げ食べる?」 「食べるー。鮭食べる?」 「ちょっとだけ」  2人でお弁当の中身交換して、ちょっとの間、黙って食べてから。  蒼紫が言った。 「……好き嫌いとか、得意な事も苦手な事も、お互い全部知ってるよな」 「ん。知ってると思う」 「――――……言いそうな事とか、考えそうな事も分かるよな」 「うん」 「なのに――――…… お互い好きだったとか、全然分かんなかったな」  そんな風に言われると。  確かに、他の事は全部分かるのに、とも思うけど。 「――――……でも、そこだけは、死ぬ気で隠そうとしてたからさ」 「まあ、オレも。バレないように、女のことばっか話してた時もあった。疑われたくなくて」 「――――……絶対、分かんないよね」    2人で、苦笑い。  ふ、と。蒼紫が箸を置いて、オレの頬に触れた。 「……涼、オレの事好き?」 「うん。好き」 「……どん位?」 「――――……どん位って……難しいけど」 「ん」 「――――……ずーっと2人で居たい、位?」  一生懸命考えて、出てきた言葉を言ったら。  ふ、と笑われてしまった。  恥ずかしくなって、む、と膨れて見せてしまう。 「何で笑うの。 ……じゃあ蒼紫だったら、何て言うんだよ?」  ちょっとジト、と見つめると。 「んー……もう涼の事誰にも見せずに、閉じ込めて、ひたすらオレが可愛がりまくりたい位?」 「――――……何それ」  オレも笑ってしまった。  ていうか、オレのはまだ普通じゃん。  閉じ込めてって、きたぞ、蒼紫。 「……テレビで皆がお前見るとか、嫌」 「てか、お前にその世界に連れ込まれたんだけど」 「……だってあん時は――――……」  蒼紫が一瞬口をつぐんで。 「……ずっと居るには、それしかないと、思ったから」 「――――……」 「もちろん、涼が歌もダンスもへたくそだったら諦めたけどさ。イケそうって思ったら、我慢できなかったし」 「――――……オレも。最初は絶対無理って思ったけど…… 頑張って蒼紫とずっと居れるなら、て思って……」  言うと、また頬にキスされる。 「でも、今はもう、閉じ込めたい」 「――――……はは。本気?」 「本気。見せたくないなー、涼のこと」 「じゃあオレ、引退する?」 「……だめ。一緒にずっとやってく」  両極端なこと言ってる。  見せたくないとか言って、芸能人一緒にやってくとか。  ――――……おかしくなって、笑ってしまう。 「まあでも――――…… オレも、一人占めしたい気は分かるかも」 「分かる?」 「うん。分かる」  頷くと、蒼紫は、くす、と笑って、今度は唇にキスしてきた。 「……なんかマジで。夢みてえって、思う」 「……ん」  少し、離れた蒼紫の唇に、自分から少し近づいて、ちゅ、とキスした。 「――――……あーもう…………涼」  むぎゅ、と抱き締められる。 「すげー、好き」  囁かれて。  なんか、幸せなのに、泣きそうになる。  違うか。幸せ過ぎて、泣きそう、なのかな。 「……弁当たべるか」  すっかり置き去りになってたお弁当に、蒼紫が笑いながらそう言った。 「うん」  ゆっくり離されて。  また箸を持ち直して。  でもなんとなく、蒼紫を見上げたら。  すぐ気づいた蒼紫に、ふと、見つめ返されて。 「――――……」  笑まれて、頬をすり、と撫でられる。 「キリ無えよな……食べちまお、涼」 「ん」  ほんと。  キリ、無い。  もう、ずっと見つめて良いんだって、思うと。  ――――……なんか、目が、離せない。    

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