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第21話 シロ

「(かゆいなぁ。この手についてる青いのじゃまなんだけど、何でこんなところにあるんだろ。でも、ご主人さまは取っちゃダメだって言うからとらないけど)」 「(あー。体があつい。これがキモチイだよね。この体がおもいのも、なんかもうすぐだよって言ってるみたいで、うれしいんだ。しぜんとえがおになっちゃう)」 「(はやくあいたいなー。がんばったよって。いってあたまなでなでしてもらうんだー)」 「(てんしさまはみたいけど、てんしさまはおかあさんのところにつれていってくれないからあわなくていいの)」 「(からだがあとちょっとっていってる! うれしい! あとちょっとがんばるね!)」 「(はやく! はやく! いきたいな)」 ♢♢♢  ーー北の繁華街の中心よりちょっと外れた所にある娼館。 「はい。いらっしゃい。初めてさんかい?」 「”シロ“をお願いします」  今回は普通の娼館の為、ライオネル達は客として入り店員に声をかける。 「”シロ“かぁ。うちに来る前からだけど、もう結構壊れてるけど良いのかい?まぁ、値下げしてるからお得ではあるけどな。あと、お客さん達は約束事は守れるかい?」 「約束?」 「あぁ、契約で約束を守れない客は”シロ“の相手はさせられないんだよ。」 「約束を教えてください」 「あぁ。因みに3人一緒か? 一緒の場合は3人それぞれ1人分として取るぞ」 「3人一緒に出来るんですか?」  娼館といえども、働く者にも人権はある。犯罪防止のためにも複数人対応可能なのは普通の娼館でも少ないのだ。 「”シロ“は殆どNGがないからな。ただ約束事だけは絶対だ」 「分かりました」 「じゃ、忘れるなよ。1つ目は、ヘアピンは取り上げないこと・壊さないこと。2つ目は青いリボンを外さないこと。3つ目は酷くすること。どうだ守れるか? ってあんちゃん何泣いてるんだ?」  ライオネルは紫音だと確信した。  あんな安物のリボンとヘアピンを守る事を条件に何をやってるんだと怒りたい。 「全て守るから、会わせてくれ」 ♢♢♢ 「”シロ”ご主人様が3人いらっしゃったぞ」 「3にん! やったぁ。ありがとう」  店員は部屋に客を案内すると出て行った。  ぞろぞろとローブの3人組がベットの側に寄ってきたので、”シロ”は床に跪いてご主人様を出迎える。 「いらっしゃいませー。”シロ”っていいます。キモチイこといっぱいしてください」  “シロ”は早くキモチイことがしたくて、自然と笑顔になる。 「シオン……」 「ん? “シロ”だよ。はやくしよう! おふろはいる? このままする? ふくぬがないでする?」  暫く固まった後、3人ともローブのフードを取って期待のこもった目を”シロ”に向けると、また動かなくなった。 「ん? ふくをぬがせてほしいの?」  3人とも目が絶望の色に染まる。3人のうち中央にいた1人が崩れ落ちる。 「シオンごめん。ごめん……」  そう言って“シロ”の体を抱きしめる。 「んー。いたいの? じゃぁいたいのいたいのとんでいけー いたいのとれた?」  益々泣きじゃくるご主人様。 「……シオン帰ろう」 「ん? “シロ”のうちはここだよ」 「シオンの家はここじゃないよ。俺と一緒に帰ろう」 「(このごしゅじんさまはなにをいってるんだろう?)“シロ”だってば! やだよ! だってあとちょっとなんだもん。あとちょっとしたら、がんばったねってなでなでしてくれるんだもん。……ねぇねぇ、おどうぐもいっぱいあるからしよ?」  甘えるように微笑みながら近くにあった鞭を泣いているご主人様に差し出す。 「シオン俺と一緒にいこう」  鞭を差し出した”シロ”の手から鞭を奪ったのに手首は掴んで離さない。  このご主人様はする気が無いようだ。なら”シロ”にとってこのご主人様に用はない。 「いやだってばー! “シロ”はここにいるの! しないならかえって」 「ほら熱も出ているじゃないか。まずは治そう」 「いやだー!! やめてよ! やめて! さわらないで! やだ! やだ! やだー!」  ライオネルが治癒の回復魔法をかけ始めると“シロ”は暴れ始めた。小柄だとはいえ、思いっきり暴れられると1人では抑えきれない。 「やだ! やだ! やだーー!! やめてよー!!」  アインとルイスも抑えるが、埒があかないと一度回復魔法はやめて眠りの魔法をかけた。 「シオンは連れて帰る。金で解決しなければ脅してこい」  ライオネルは暗い顔と苛立ちを隠しきれないまま、ルイスに命じて意識のない紫音の身支度を整え、待つ。  ルイスが準備が整ったと言ったので、ライオネルの転移で一気に王宮へ戻った。

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