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第20話 焦燥(ライオネル視点)
「……。(まだ見つからないのか)」
ライオネルはイライラと机を叩く。
紫音が消息を経ってから1ヶ月が経過していた。
1ヶ月前、ライオネルが紫音に謝ろうとしていた日はタイミングが悪く緊急で討伐遠征が入った。寝ていた所を叩きおこされ、見事2日酔いのまま取り敢えず現地へ赴き作戦を練り、討伐する事になった。
ルイスは王都居残り組で、緊急討伐でバタバタしており、朝紫音が王宮を出た事をライオネルに伝えられなかった。当初の予定は往復含めて3日の予定であった事もあり、帰って来てから話せば良いと判断していた。
ただ、間の悪い事に討伐対象の魔物が、森に逃げ込み、逃げに逃げまくり5日を過ぎても討伐が完了しない事態となった。
ライオネルは上の立場の為、自ら動く事は少なく、基本的には討伐部隊の指揮を取る。ライオネルが前に出ると魔法の威力が高く森が破壊される事もあり、ライオネルが直接手をかけるのは最終手段となっているのだ。
ライオネルの方が時間がかかっている今、ルイスは紫音に”割とすぐに迎えに行くと思う”と言った手前、様子見を兼ねた一報を入れておこうと、部下を使って“森の木の実”へ使いをやった。
そして、その夜初めて“森の木の実”という店が王都に存在せず、紫音が消息不明である事を知った。
これはマズイと6日目にライオネルとコンタクトを取ると、ライオネルは討伐対象が岩場に移動した瞬間に火炎放射を浴びせ、7日目にはいつものごとく単身で先行して帰ってきた。
因みに岩場は溶岩になっており、辺りが高温で近付くのも危険な状態となっていたらしいが森を丸焼けにされるよりは良いと皆に納得されていた。
なりふり構わず帰ってきたライオネルとルイスでお互いの話をすり合わせた所、紫音の話の殆どが嘘である事が分かった。ライオネルの部屋を訪問した筈の紫音だが、部屋の前にいた護衛騎士はその日ライオネルが部屋に篭ってからは誰も訪れていないと言う。
ただ、紫音がルイスに話したお酒の話は合っていたのと、ライオネルは机で寝ていたような気がするのに朝ベットにいたことから、もしかしたら何らかの方法で入った可能性があり、メモなど残っていないか部屋中を探したが何も無かった。
ライオネルが最初に紫音を見つけた方法“異物”としても勿論探索してみたが、紫音がこの世界にきてこちらの食べ物を食べ生活している為、もう”異物“としての捜索は難しくなっていた。
ただ、気配が薄く場所は特定出来ないが、王都内からは出ていないような感じはしている。
その為、王都内の情報屋に頼んで情報を探っていた。
と、その1人から連絡が入った。
”シロ“という名の12歳位の黒髪の娼婦が1週間程前から北の娼館にいると。
紫音は男なので娼婦ではない筈だが、王都の情報屋に探らせた所、黒髪で12歳位の娼婦自体がそもそも少ないらしい。この国の標準は茶髪であり、茶髪以外の色付きの髪の場合は優れた魔力を持ってる事が多い為、色付きが娼館で働いている事の方が珍しかった。
娼館側も盗まれては困ると、色付きは隠す傾向にあるのだ。
そんな中での情報ならば確率が高いか、と提供してくれた情報屋の元へ行き詳細を聞く。
今回はルイスとアインを伴って3人で件の娼館へ向かった。
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