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第1話:やっぱムリッ!***(1)
オレはフィオン。貧しい靴磨き屋だ。
父さんは4年前に肺を患って他界。今は病弱な母さんと2人暮らし。借金を作りながらどうにか暮らしていた。ほんの1週間前までは――。
事の発端は領主、ブルターニュ伯爵の愛娘イリスが王の眼鏡に適って王子の花嫁候補のひとりに選ばれたのがきっかけだ。
本来なら王の花嫁候補に選ばれるのは名誉あること。もちろん両親は手放しで喜んだが、本人は乗り気ではなかった。それというのも王子は実直な人柄で知られているのだとか。
そしてイリスは――ワガママ贅沢が大好きだった。ともなれば、たしかに王子は彼女が喜ぶ相手ではない。
本人が気乗りしないなら話を断ろう。イリスに激甘な両親は白紙に戻そうとするが、相手は王。断れば自分たちの身が危うい。何より、王子の花嫁候補の座を自ら退いたとなれば伯爵家代々の面汚しだ。
それならば、と伯爵は愛娘に似た身代わりを探し、挙手するだけに留めて妃の座は他の候補者に譲ることにした。
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