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第1話:やっぱムリッ!***(5)

 だけど今のオレはイリス・ブルターニュ。伯爵家の令嬢だ。だからなのかな。対等に扱ってくれるのは……。  それはそれで複雑だけど、今は平等に接してくれるのが嬉しい。 「堅物っていうのは当たっているが、違う呼び名が嬉しいんだが……」 「あ、ごめん。ユーリアンでいい?」 「かまわないよ。君は、たしか――」 「ユーリアン王子!」  兵士かな。男数人の声が近くから聞こえた。 「まずい。ちょっとごめんね」  オレの体がふわりと浮いたと思ったら、次の瞬間には草陰の中にいた。 「ユ、むぐ」  兵士たちがユーリアンを呼ぶ中、オレが声を出そうとしたら口を塞がれた。  探してますけど? 「なんで隠れてんの?」  兵士たちの足音が遠ざかってから、オレの口はようやく解放された。 「ああ、いや。実は今回の舞踏会には参加しないつもりなんだ。君達花嫁候補には悪いと思っているんだが、まだ足下の地盤を固められていない。父上の命令で動いてみたが、やはりまだ時期尚早だと思うんだ。おそらく皆もそう思っているだろう」 「ユーリアンは、さ。すごく頑張ってるって村の連中が言ってた」 「村?」

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