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最終話:嘘と本当。***(2)

「フィオン?」 「!」  それはオレの名前。  沈黙が部屋を埋める中、ユーリアンが呼んだ。 「どう、して……」  ぽろぽろと涙が頬を伝う。  名前、言ってない。  教えてないのに。  あまりにも優しい声で呼ぶから。 「知っていたよ。初めて会った夜君と出会って、あまりにも噂と違っていたら不思議に思って気になったから従者に調べさせた。君が何者でも構わない。フィオン、俺は君を愛している」  これは都合のいい夢?  だけど。 「オレだって! でもオレは男だし靴磨き屋でユーリアンとは身分が違う!」 「なんだ。そんなこと」 「そんなことって!」 「俺に弟がいるのは知っているだろう? 実は君の拉致を企んだのは義母だ」 「なっ!?」 「俺は弟が然るべき年齢になれば王位を退くつもりだ。王位なんてどうでもいい。君といる間、とても心が安らいだ。こんなの君が初めてだった。俺には君が必要だ。側にいてくれないか……フィオン?」  オレを見下ろす目の中に青い炎が見える。  ああ、この目だ。  凍りついた心を簡単に溶かしてしまう眼差し。  熱くて優しい目。  そしてオレの返事はユーリアンの口の中に吸い込まれるんだ。  *Fin*

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