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第3話

「なあ、いつものねぇの?」  ぽんぽんと背中を叩きながらの刹那くんに言葉に、やっとちょっとだけ笑う。いつものと言われれば、一つしかない。 「刹那くん、かっこよくて、大好き」 「大好き、だから?」 「……大好きだから付き合ってください」  促されて口にしたのは、初めてのちゃんとした告白。  そういえば俺、好きだっていう自分の気持ちを伝えることしかしていなかった。  その先なんて、考えたことがなかったから。 「どーしよっかな」  そして初めての告白に返ってきたのは、まさかの曖昧な反応。  この流れでそうくるのかと驚いて、飛び跳ねるように体を起こすと刹那くんが噴き出すように笑った。 「じょーだんだって。そんな顔すんなよ」  よっぽど驚愕を顔に張り付けていたんだろう。刹那くんが笑いながら俺の顔に触れて、撫でて、それから優しい笑顔を作った。 「俺の方が好きだから付き合って」 「……はい」  夢にまで見た、というか夢さえ見られなかった刹那くんからの告白。  心臓がばくばくして、苦しくなりながら頷いてからちょっと考える。 「って違うよ! 絶対俺の方が好きだって」 「俺の方がお前とどうしたいか具体的に考えてるから、将来性を含めて俺の勝ち」 「……具体的?」 「これから先、一緒にいてなにするか。おこちゃまにはまだ聞かせらんねぇけど、全部叶えるには時間がかかるだろうな」  それはつまり、それぐらい長い間一緒にいてくれるということで。  そんな風に考えてくれていたことがまったくの予想外で頭が煙を吹きそうだ。  だってずっと鬱陶しがられていると思っていたのに。まさか好きだと言い続けて刹那くんの気持ちが動いてくれるなんて。雨垂れ石を穿つって、本当なのか。 「……なんか、死にそう」 「どんな喜びの表現だよ。いいのか? 今死んで。あれもこれも俺と試してないのに」  力が抜けてベンチに倒れ込みそうになる俺の体を再び引き寄せて、刹那くんがからかうように笑う。  意味ありげに濁される刹那くんの言葉がなにを意味しているのか、今は深く考えないで置こう。じゃないと本気で倒れそう。  そうじゃなくても、こんな風に刹那くんの温かさを感じて、それだけで胸がいっぱいなのだから。 「……急にいっぱいずるい。かっこいいのずるい」  こんな言い方はなんだけど、まさかこんな気持ちが返ってくるとは本当に思わなかったんだ。思ったままの気持ちを告げていただけで、返してくれることなんて期待していなかった。  それなのに、刹那くんはいつでも俺の想像の上を行く。かっこよくて、優しい。 「そんな俺が好きなんだろ?」 「好き。すんごく好き。大好き」  言うたびにまた好きになる。  もっともっと、強くこの気持ちを表す言葉があったらいいのに。 「かっこいい。好き。大好き……ひゃっ!?」 「これからはその言葉大事にしろよ。キスが欲しい、って俺の耳には届くからな」  とにかくいっぱい言いたくて呟く俺の耳に、刹那くんは小さなキスと大きな爆弾を落としていった。  俺の言葉を封じるには、無視よりなにより、それが一番効くらしい。  そして次の日、俺が出合い頭に真っ赤になっていつものセリフを言えなかったことで、なにかあったのだということが一発で周りにバレたのは言うまでもない。

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