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sign language 第1話 | おととなななの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
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第1話
作者:
おととななな
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第1話
折小野一騎
(
おりおのいっき
)
はチャラい。 彼の名前を聞いたものは皆が皆口を揃えてそう言う。 ハイトーンのヘアカラーに、両耳には無数のピアス。 ファッションは某韓流アイドル風でおまけに女にだらしない。 鮮烈な大学デビューを果たした一年目の終わりにはそんな噂がそこら中に広まっていた。 確かに見た目は派手だ。 その見た目のせいか、女の子たちからも絡まれやすい。 だが、一騎は元々チャラいわけではなかった。 小学生から高校までは絵に書いたような地味男だった。 クラスの中のヒエラルキーでは底辺中の底辺。 あだ名は「眼鏡」か「真面目くん」 イジメこそないものの、よく揶揄いの標的にされたりしていた。 そんな冴えない人生に嫌気がさした一騎は、大学入学をきっかけに自分を変えることを決意する。 髪型を変え、服装を変え、話し方まで変えた。 おかげで大学内での一騎のヒエラルキーは上昇。 それまでの地味で目立たない折小野一騎から、派手でチャラ男の折小野一騎になったのだ。 ちやほやされるのは気持ちがいい。 女の子に囲まれるのは嬉しいし、チャラいという言葉もそれほど嫌いじゃない。 だが、時々どうしようもなく疲れる事がある。 それもそうだ。 今の一騎は、本来の自分が見えなくなるほどの重装備で身を固めた状態。 重い鎧をずっとつけっぱなしでいれば疲れるに決まっているのだ。 今日も一日チャラ男を演じた疲れに足を引き摺りながら帰宅していると、ふと図書館が目に入った。 市役所の横に隣接された図書館は、大学に入る前まで何度も足を運んだ場所だ。 死ぬまでに図書館にある本を読破してやるくらい本の虫だったが、ここ一年間は全く足を踏み入れていない。 友人や女の子たちとのつきあいに時間を費やしていたからだ。 「たまには行ってみるか」 なんだか無性に恋しくなって、一騎は久しぶりに図書館に足を踏み入れる事にした。 派手な髪色と服装は図書館の中では妙に浮いているような気もしたが、ズラリと並んだ本棚を見た瞬間、そんな危惧は全部吹き飛んだ。 見た目が様変わりしてしまった一騎とは反対に、図書館の中は全く変わっていない。 作家の並びも、ジャンルの並びも。 それが妙に嬉しくて、自然と心が躍る。 ああ、この本好きだったな… これまだ読んでない… 時間を忘れ夢中になりながら散策していると、突然背中に何かがぶつかってきた。 「うおっ!?」 なんだ?と思いながら後ろを向くと、知らない男が盛大に床を転がっていた。 「わ、悪い」 自分がぶつかったわけではないのだが、一騎は咄嗟に謝ると転がる男に手をのべる。 だが、男は一騎の手を取ることなく慌てた様子で立ち上がると、散らばった荷物を無造作に集め始めた。 なんだよ…そっちからぶつかってきたくせに謝りもしないで。 内心舌打ちをしたが、面と向かって文句を言える性格でもない。 すると一騎の足元にコロコロとボールペンが転がってきた。 「これ、落ちたよ」 一騎はそれを拾うと荷物をまとめる男に差し出した。
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