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第5話

今にも飛び出しそうな心臓を必死に押さえながら、いつものように琉衣の前の席に座る。 にこりと微笑み筆談ノートを取り出そうとする琉衣の手を止めて、一騎は大きく息を吸った。 首を傾げ不思議そうな顔をする琉衣に向かって一騎はゆっくりと右手をあげる。 自分を指差し、次に琉衣を指差し、人差し指と親指を伸ばし矢印のような形をした指をゆっくりと閉じながら顎から胸へと下げた。 『俺は、琉衣が、好きだ』 その動きを見ていた琉衣の目がみるみるうちに大きくなっていく。 『手話…いつのまにできるようになったの?』 琉衣はおずおずと手を動かした。 その動きは、一騎の中にきちんと言葉になってって伝わってくる。 『頑張って勉強した。筆談だと時間かかるし書いてたら顔見えないだろ?まだゆっくりだけどもっと勉強するから』 一騎の辿々しい動きを読み取って、琉衣がこくこくと何度も頷く。 一度眼鏡を外し、溢れる涙を拭うとにこりと微笑んだ。 『嬉しい…僕、一騎と話せてるんだ』 『うん、話せてる』 一騎も微笑み返す。 『あのね…僕も一騎が好きだよ』 今日も静かな図書館の片隅でサインが飛び交う。 照れたり、笑ったり。 時々怒ったり、喧嘩したり、悲しんだり。 初恋が教えてくれたのは、無理に自分を変える必要はないということだ。 互いを尊重し、受け入れて、足りないところを補える関係。 きっと足りないからこそ人は支え合うことができるのだ。 交わす声はないが何も不自由はない。 二人にはサインランゲージがあるのだから。 end.

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