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続 4 : 16 *

 抱き締め合い、体を重ねて、気持ちを伝える。  そんな恋人らしい触れ合いや戯れに、ここまで胸が熱くなるなんて。俺らしからぬ感傷が、あまりにも落ち着かない。 「文一郎って、意外と甘えん坊だよね。しかも、その甘え方が子供みたいだ」 「それは悪かったですね。……お見苦しいものを、お見せして」 「『見苦しい』? ……まさか。そんなことないよ」  不意に。 「──むしろ、そんなところも堪らなくそそられる」  俺のケツを掴む先輩の手が、強引に俺の腰を動かした。 「あ、ッ!」  グリッと、奥深いところが突かれる。息が詰まると同時に、駆け巡る快感。俺は一瞬だけ目の前を明滅させつつも、先輩にしがみついた。 「やだ、だめ、っ。俺、そうやってされると……ッ」 「気持ち良すぎておかしくなっちゃう? それなら、僕としては本望だよ」 「馬鹿、先輩の馬鹿──ん、ひ、っ」  容赦なく、何度も何度も奥を突かれる。今日は俺が動くと宣言したつもりだったのに、どうしてこうなってしまうのだろうか。  ……まぁ、嫌ではない。悔しさとかそういったものはあるが、不快ではないのだ。 「凄く締まるよ、文一郎のナカ。気持ちいい」 「んッ、あっ、あ、っ!」 「それに、顔が近いからエッチな声がよく聞こえる。……文一郎、もっと僕にしがみついて。その方が、僕は嬉しい」  さすがだな。そうやって先輩の喜びを主張されると俺が拒否できなくなると、よくご存知だ。 「奥を突くと、文一郎が凄く甘くなる。……可愛いなぁ、本当に」 「ん、ふぁ……ッ。……章二さん、もっと……ッ」 「うん、いいよ。……って、ごめんね。本当は余裕ぶって、文一郎が僕を求めてくれる姿を見たかったのに……結局は、我慢できなかった」  優しい言葉を遣うくせに、俺を攻める下半身は全く優しくない。  何度も何度も恥ずかしい声を俺に出させながら、先輩は俺の耳元に唇を寄せた。 「そろそろ出そう。……ナカに出すね」 「あ、ッ。俺も、もう……ん、ふ、ぁあ……ッ!」  殊更強く、先輩に抱き着く。このまま融合でもするんじゃないかってくらい、上も下も先輩と熱く溶け合ってしまいそうで……。 「……っ。……文一郎、凄い締め付けだね。お尻もだけど、僕に抱き着くこの腕も。うん、凄く可愛い」 「うる、さい……っ。章二さんの、馬鹿……っ」  ただ、抱き合うだけ。どうして今さら、この程度の触れ合いで心がこんなにも満たされてしまうのだろうか。  この人といると、不思議なことばかりだ。俺みたいな奴が特定の人間を心配したり、愛しく想ったり、他にも色々と……。  ……だけど、それも存外、悪くない。  ──嗚呼、過去の俺よ。  ──【関心を抱く】というものは、思っているよりもいいものだぞ。  ……そう、先輩と出会う前の俺に言っていたら。いったい、どんな顔をするのだろうか。 「……章二さん」 「なぁに?」 「俺も、章二さんに……キスマーク、付けられたい」 「っ! うんっ、喜んでっ!」 「下半身まで喜ばせないでください、バカまる先輩」  あるいは、先輩のセクハラに心底気を揉んでいた時期の俺でもいい。  この人を好きになって、頭の中のほとんどがこの人に占拠されて、この人以外なにも欲しくなくなって……。きっと、過去の俺は今の俺を睨むのだろう。そして『アホなことを言うな』と言ったに違いない。  そのくらい、嘘みたいで。そのくらい夢みたいに思えるほど、素敵なことだと。  どれだけ言葉を重ねたって、実際に体験しないと分からないだろうけれど。それでも思わず、誰かに伝えたくなってしまったのは……俺に訪れた、大いなる変化なのだろう。

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