230 / 250

続 6 : 16 *

 冷静になったところで、抱かれる──もとい、愛されることに変わりはない。  先輩は俺が纏う服をまくり上げ、そのまま俺の上半身に顔を寄せた。 「ん、っ」 「文一郎って、上半身が弱いよね。特に、胸の辺りがさ。敏感で可愛い」 「胸で感じるアラサー男なんて、ただの恐怖映像でしょうが……っ」 「それが僕の文一郎であるのなら、愛おしいよ」  ……く、そっ。サラッと、口説いてきやがる……っ。  先輩は俺の胸に顔を埋めて、そのまま舌を動かす。生温かい舌先で、俺の乳首をピンと弾くために。 「あっ。……んっ、ぅ」 「文一郎、少しだけ力抜いてね。後ろ、指で慣らすから」 「だったら、胸を舐めるな……っ。ひっ、ん」 「感じる文一郎を見ていたいんだよ。だから、やめない」 「噛むな、ばか……っ」  先輩の歯が、俺の乳首をやらしく──もとい、優しく噛む。チクショウ、感じる。どんどん後戻りできない体になっている気がするぞ、チクショウめ。  胸で感じる無様な俺を弄びつつ、先輩は宣言通りに指を俺のケツ穴に突っ込み始めた。あっ、クソ、いつの間にローションなんか手に垂らしてやがったんだ、この男。すんなり侵入してくるじゃないか、クソスマート男め。 「ナカ、熱いね。早く挿れたい」 「ベッドの上でも、結局せっかちなんですね……っ」 「文一郎が誘い上手なんだよ。エッチな子だね」 「責任転嫁、絶許」 「『ぜつゆる』ってなに? エッチな言葉?」 「『絶倫』って意味でも『ケツ穴が緩い』って意味でもねぇ」  とかなんとか言いながらも、先輩の指は的確に俺が感じるポイントを突いてくる。あぁ、クソ……ッ。奥側をグリグリ押されると、疼く。  そっちが『挿れたい』と思うように、俺だって『挿れられたい』と思っているんだぞ。サッサとその凶器をぶち込め、言葉通りの快楽殺人鬼め。 「指が、凄く締め付けられる……っ。今日の文一郎も、凄いね」 「先輩……っ」 「いつもよりナカが、甘え上手。もしかして、トラウマ克服のご褒美?」 「ご褒美が俺、なんて……そんなエロ同人的展開は、ないですから……っ」  軽口はいいから、サッサと指を増やせ。あぁ、もう。俺は素直にそう言えないんだから、いつもみたいに察してくれよ。  ジッと見つめると、気持ちが届いたのか。先輩が指を増やし、さらに俺の内側を広げてくる。 「はっ、ん。……ん、っ」 「気持ち良さそうだね、文一郎?」 「自意識過剰……っ」 「そんなことないよ。絶対、指よりも僕自身の方が気持ち良くできるもの」 「ヤッパリ自意識過剰じゃないですか……っ」  事実だけどな、馬鹿野郎。  ぐちぐちと卑猥な音が鳴ると、それだけで骨の髄まで犯されているようで。いつもの愛撫や慣らしだって気持ちいいが、ベッドの上でムードも満載だと感じ方が違う気がした。……錯覚だろうが。 「せん、ぱっ、ん……っ」  ちゅ、と。乳首が、わざと音を立てて吸われる。それにも律儀に反応してしまう俺の体は、きっとケツに突っ込まれた先輩の指を締め付けたに違いない。 「文一郎……っ」  ねちっこく後ろを弄ってきた指が、突如として抜かれて。……俺に覆いかぶさる先輩が、体勢を改めてきたのだから。

ともだちにシェアしよう!