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理人

 理人は帰宅するなり、携帯を手に取った。  普段使うのはスマホだが、初恋の人がデコメを送ってくるので、それ専用になっている。  さっき、出先で同じ型の別の携帯をこっそり操作したみたいに、メールボックスを開く。  「未送信メール一件」の表示。理人はそのメールを編集モードにした。 〈520回目も、僕に恋してくれてありがとう。また来週〉  クリアボタンを連打する。 〈52〉  親指を使って、新たに文字を入力する。 〈521回目も、僕に恋してくれてありがとう。また来週〉 〈送信しますか? はい ▽いいえ〉  点滅する選択ダイアログを見つめる。  いろいろ試して、最終的にこの形に落ち着いた。悠真が穏やかに過ごせるよう考えてのことだ。でも、理人が生まれてはじめての感情を抱いたときとまったく同じ言葉で話し掛けられると、つい期待してしまう。  次の一週間こそもしかしたら、と。

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