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結びの言葉
「相原さん!」
息を切らして彼の家に着く。
門を押して庭を突っ切ると、相原さんが足を垂らして縁側に座ってるのが見えた。
彼が振り向く。結んだ髪が揺れた。
「恵くん」
「相原さん、これ――!」
僕は倒れる勢いで彼の隣に座って、封筒と便箋を振った。
すると相原さんも罫線の入った紙を僕に見せた。
息が止まる。
それは夏休み前に僕が送った、あなたが好きですと書いた手紙だった。
「君でしたか」
「……」
返事しないといけない。
「あの、僕――」
「お気持ち、嬉しく思いました。作品を読んでくださったのも、道案内も、何度も訪ねてくださったことも、上がっていかれたのも」
「……何度も?」
気づいてたんだ……
相原さんはこく、と頷いた。
「あの時は……」
顔が近づいた。
「君を怖がらせてしまったのではと落ち込みました。ですが、僕のお返事を受け取りこうして来てくださったということは」
彼の目が僕を射抜く。
「君の想いは、このお手紙に綴られた通りと思って良いのでしょうか?」
「僕の……想い」
考えようとして、胸がいっぱいになった。
わからない。でも……
目をそらさないで、ちゃんと相原さんを見つめ返す。
「……僕は、」
言葉の端を風がさらう。
僕の手に。
そして彼の手にも。
それぞれ、初めて知る気持ちを伝える手紙が握られていた。
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