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第4話

「あ、修行には目的とかないんだ。ただ、暇だったからやってたって感じ?」 「ハハ……そんな休日のクロスワードパズルみたいな……」 「うん。だって、1000年もあったら、やってないことなんてどんどん減っちゃうし? 楽しいことは確かに続けられるけど、だんだん楽しくなくなるんだよね。ある程度、やっちゃうと!」  ベジは目を瞑ると、今までしてきた色んなことを話し出した。 「ある町に3分間だけ飴を降らせたり、3時間だけモンブラン山をケーキの方のモンブランみたいにして、遊んだっけ」  鍵尾としてはいよいよファンタジー過ぎることだが、最後は何とか、人間にもできそうなことだった。 「恋は初めてしたけど、なかなか楽しいね」 「あ……」  鍵尾の目の前にいる少年はもう1800年も生きているおじさんの魔法使いで、暫く楽しいこともなかったのだろう。  鍵尾としても、その辺りの感覚は分かる。  年々、嬉しいと思うことも驚くことも少なくなってきて、最後には何が嬉しくて楽しかったのかと感覚が、感情が擦り減ったようになくなっていく。 「恋って僕もしたことないかも……」  では、という訳ではないが、鍵尾も自分があと何年、生きられるか分からない。それならば、ベジと恋を楽しむ……というのも悪くない気がする。  元々、2人はこの家で楽しく暮らしてきたのだから。 「ダメだったら、ごめんね」  お互い、初めてする恋だからどうしても、上手くいかないこともあって、最終的にはやっぱりダメになることもあるかも知れない。 「良いよ、楽しかったら良いんだし。楽しくなくなったら、またその時に考えれば良いんだから」  その日、ベジが眠ると、鍵尾は書くのをストップしていた日記帳を何度も何度も書き直していた。  他の人が見たら、ファンタジーなのか、夢なのか、現実味のない文章を羅列した末、鍵尾は一文だけ書くことにしたようだった。 『202X年3月X日(金)  初めて好きな人ができました!』

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