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第3話

 別に鍵尾はベジが猫だから一緒に暮らしていた訳ではない。  ……ないのだが、世間的に考えると、見た目が少年の1800歳のおじさん魔法使いと見た目が40代の50歳のおじさんだけが住んでいる家というのも人に説明する時に困るかも知れないと鍵尾は思う。  そのことをベジにそれとなく、言うと、ベジはそんなことかと笑う。 「あ、僕は結構、優秀な魔法使いだから、姿を変えるなんて朝ご飯前だよ!」  ベジはそう言うと、年端もいかない少年から高校生くらいの少年になり、それでも、若いかと鍵尾と同じくらいの50歳くらいの男性になる。    また、男性だけでなく、口元のほくろがセクシーな女性や猫ではなく犬やサボテンといった動植物、時計や箸置きといった無機物にも姿を変えた。 「分かった! 分かったからもう良いよ……じゃあ、修行は続けるの?」  そもそも、鍵尾に恋するまでベジは修行をするという目的で、鍵尾の家へ来て、猫として暮らしていた。  ベジがまだ修行とやらを続行するか否かは分からないが、もしかしたら、師匠に別の修行を行うよう言われているのかも知れない。  また鍵尾はそのことをベジにそれとなく、言うと、今度もベジは笑う。 「修行は……もうしないかな? お師匠様には泣きながら怒られて、お前は破門だ!! って言われたから」 「破門?」  先程は『結構、優秀な魔法使い』と自身を称していたベジだったが、どうやら、魔法使いの世界では人間を含め、他者に恋をすると、師匠から破門を言い渡されるらしい。 「そんな昔のアイドルみたいな……って、それは困るんじゃないか?」  何を目的としてかまでは分からないが、修行をしていたということはベジにも目的がある筈だった。  先程、ベジは『修行はもうしない』と答えたが、それは『修行はもうできなくなった』ということでもあった。

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