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第2話

 何か洒落ていて、呼びやすい名前を……と思い、3年前、鍵尾は『緑色』に関した色んな言葉を検索していた。  だが、検索したものの、庭先で倒れていた猫を発見して、木曜日の午後でも空いている鍵尾家から離れた動物病院に連れて行ったりして、疲れていたのだろう。  猫の瞳である緑色とその日、鍵尾が夕食に買っていた「おふくろさんの愛情とベジがたっぷり弁当」から『ベジ』と名づけて、3年前から可愛がっていた。 『201X年3月X日(木)  今日は珍しく有給だったので、掃除しようと庭に出た。すると、庭には猫が倒れていたので、病院に連れて行った。飼い主もいないらしく、ベジという命名し、一緒に暮らすことにした』  3年前から……欠かさず、鍵尾はベジとの生活を日記につけていたが、つい2週間前からそれは途切れていた。というのも、ベジは何の前触れもなく、鍵尾家から姿を消したからだ。  鍵尾は仕事をしながらも、時間を見つけ、ベジを探していたが、とうとう見つけられず日々を過ごしていたのだ。 「急にいなくなるから、凄く心配してたんだよ」 「ごめんなさい。貴方を好きになっちゃって、何だか、分からなくなって、お師匠様のところへ行ってたんだ」  鍵尾の兄が言っていた通り、現実離れした話になるが、ベジの言い分は自分は実は、猫ではなく、人間でもなく、魔法使いで猫に擬態しつつ、人間の生活に溶け込むという修行をしていたというのだ。  しかも、年を聞くと、少年はもう1000歳を軽く超えているという。 「1000歳……」 「うん、もう何年もちゃんと数えてないけど1800歳くらい?」  生まれてから1800年というと、日本であれば、縄文時代から江戸時代くらいになるだろうか。  元来、小説や映画はファンタジーものよりはドキュメンタリー派の鍵尾にはついていけず、完全においてけぼりだが、ベジは続ける。 「だから、どちらかと言えば、僕がおじさんで、貴方の方が少年みたいなものなんだ」  1800歳 VS 50歳。  確かに、1750歳も違えば、ベジと鍵尾は老人と赤ちゃんみたいなものだろう。  しかも、ベジはこうも言っていた。 『初めて人を好きになりました!』と……。 「ハハ……」  鍵尾としては「はい、そうですか」なんて、言える訳ではないが、取り敢えず、今日のところは聞いておかなければならないだと思う。 「これから、君はどうするの?」

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