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第6話
「…知ってるよ」
雷鳴と同時に、声が響いた。
「なんで」
渉は、目を瞬かせて、瞼を擦った。
背の高い見覚えのあるその姿は、水が滴っている。
全身を濡らしたその顔は、困ったように笑っていた。
「なんで!」
渉は、声を上げていた。
照れたように、俊はその頬を少し掻く。
「なんで、かって…」
穏やかな瞳で笑って、首を傾げる。
その胸に、渉は飛び込んでいた。
「雨音を聞いていたら、我慢できなかったんだ」
「馬鹿だろ、あんた」
その濡れた胸に頬を埋めて、渉は答えた。
「我慢できないよ」
「傘ぐらいさせよ!」
「傘なんて、持ってない」
「こんなに濡れて、馬鹿じゃねーの」
「天の川を渡ってきたんだよ」
渉ははっと目を開いた。
その顔を見上げると、俊はまっすぐに見返してきた。
恥ずかしい台詞を、この男はいつもさらりと言うのだ。
間違っていないと、貫き通すように。
雨が、好きだと宣言するように。
「だから変だって、言われんだよ…!」
でも、好きなんだ。
雨も、あんたも。
終
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