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第1話

 好きだと思った。だから伝えた。その先がどうなるかなんて考えていなかった。  幼馴染の昂輝は無口でマイペースだ。その為に誤解を受けるようなことがあっても、超然としている。腕っぷしも強い。そこがカッコいい。  僕は割と人の顔色を見るこどもだったから昂輝の気高さは憧れだった。  幼稚園からずっと友達だったのだけど、今年になって変化が訪れた。  隣のクラスの女子が昂輝に告白したと知って、微妙な気持ちになったのだ。  大事な宝物を取られるみたいな気がして不愉快だった。  昂輝はその子をふったらしい。クラスでも1.2を争う可愛い子だったのに。  しかもその子を傷つけないような気遣いも持ち合わせていたのだ。紳士だ。  彼女はのちに『ふられたけどもっと好きになっちゃった』と友達に話したそうだ。  そんなカッコいい男の一番近くにいられるのが僕は誇らしかった。  でも心は落ち着かない。  昂輝のことを一番分かってるのは僕だ。  昂輝を一番好きなのも僕だ。  僕は男だけどさ。  好きなんだもの。  その時、僕の好きは友達としての好きと違うみたいだと気がついたのだった。  それにしても、昂輝はどうしてせっかくの交際の申し出を断ったりしたのだろう。  なぜだか照れくさいような気がして、どうしていいか分からなくて、複雑すぎて、まわりのクラスメートが言っていたことを僕は口にした。 「つきあっちゃえばよかったのに」  心にもないこと。  なんだか自分の声じゃないみたいだった。  全然しっくりこない。  喉になにか引っ掛かったようだ。  昂輝は真剣な眼をして僕を見た。 「俺は好きな奴としかつきあわない」  さりげなく強い返事と不愛想な唇。  僕はハッとなった。  昂輝の言う事は正しい。  つきあうのって誰でもいい訳じゃないんだもの。 「昂輝はカッコいいなぁ」  つくづくと感心する。 「昂輝のそういうとこ、凄い好きだよ」 「………」  昂輝は俯いた。なにか考える風だ。 「そういう深刻な顔つきもカッコよくて好きだよ」 「さっきからなに言ってんだ。からかうなよ」 「手が大きいのも好きだな」 「和己。お前『好き』っていうの癖なのか」 「癖じゃないよ。好きだから好きって言ってるの」  武骨な昂輝の顔がうっすらと赤くなっていた。  でもそれは僕の気のせいだったのかもしれないんだけど。

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