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第5話
「家まで送ってくれてありがとう」
普段はそんなことしないのに今日は特別だった。
昂輝は僕を大切に大切に扱う。
ありがたくてまた泣けそうだ。
別れ際、低い声で昂輝は僕に聞いた。
「和己。俺のこと怖いか?」
気にしてる。そんな風に思わせてしまったことが申し訳ない。
「違うんだ。僕がこどもだっただけ。好き好き言って思わせぶりでごめん。あ、好きって言うのはもちろんそういう意味だし、すごい本気なんだけど……。昂輝のこと大好きだよ。だけど好きだったらすることって、これから先のことって、僕はぜんぜん分かってなかったんだ」
好きだって気持ちを伝えるだけで精いっぱいだったんだ。
「色々想像したら恥ずかしいし大変だって思って怖くなっちゃったんだよ」
僕の言いたいこと、ちゃんと伝わったかな。
「俺、待つから」
まっすぐな眼をして昂輝が言う。
「和己が嫌がるようなこと、無理強いしたりしないから」
安心しろよ。そう続けて爽やかに笑う。
昂輝も僕に対してそういうことを想像してくれてたんだって分かった。
そのうえで僕のことを尊重してくれてるんだって分かった。
こどもな僕の戸惑いを許してくれる。
「僕の気持が固まるまで待ってくれるの」
昂輝は頷いた。
なんていい男。
「昂輝大好き」
感動と感謝とに恋人の手をぎゅっと握る。
「煽るなよ、バカ」
やれやれと首を振ってから、昂輝は僕の手を強く握り返してくれた。
互いの手のひらが汗ばんでる。
二人とも恋愛初心者なんだしね。
僕は胸がバクバクして落ち着かない。
でも、もしかしたら昂輝も、平気そうな顔して案外焦ってるのかもしれなかった。
そう思うと少し落ち着いた。
「和己、頼みがあるんだけど」
昂輝の重々しい言い方に僕はちょっと構える。
「明日の朝会ったら、いつも通り『好き』って言ってくれ」
「うん」
僕は思いっきり力を込めて頷いた。
もちろんそのつもりだった。
僕は思う。
大好きだよ、昂輝。
ちょっとずつ、ちょっとずつ。恋人になっていければいいよね。
僕と昂輝のスピードでね。
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