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マイナス3
※転入生視点。
山波の部屋に呼ばれたので行ってみたら知らない奴がいた。
オレと共通点があると言ってきたのですぐにピンと来た。
最近仲良くしている奴らが気持ちの良くなるクスリをくれる。
山波が生徒会長の瑠璃川と別れたのに何だかんだで一緒にいて困っていた。
オレが話しかけようとしても邪魔をして来ようとする奴がいるのは全部、瑠璃川のせいだ。
本当は山波もオレと話したいのかもしれないけれど瑠璃川のせいで出来ないなら瑠璃川の発言権というものを取り上げてしまえばいい。オレが生徒会長になれば全部解決する。周りもオレの意見に賛成してくれた。瑠璃川のことを嫌っていると友達が増えていくのだと最近気づいた。敵の敵は親友だ。
山波に近づくのではなく瑠璃川を蹴落とす知恵や力を周りはいくらでもくれるのでオレの未来は明るいはずだった。
それなのに瑠璃川の前に会長をしていたと名乗る先輩はオレの持っているクスリに「なるほど、そういう形でハメるのか」と肩をすくめた。クスリを自分に渡せと言ってくる。断ると殴られて変な薬品を嗅がされた。
目が覚めると山波が眉を寄せてつらそうな顔をして、瑠璃川はフルチンだった。変態だ。
これがオレのビックマグナムだぜという声がチンコから聞こえてくる。
血管が脈打っているグロさに血の気が失せる。
あんなものがオレのケツに入ったら痔にぐらいなると納得と同時に山波を守ってやらないといけないと決意を固める。
山波のことはオレが犯すので瑠璃川に痔にされては堪らない。
けれど、嗅がされた薬の影響なのかすぐに立ち上がれなかった。
何か言い合っているが耳に入ってこない。
ただ前会長というやつと瑠璃川がオレの頭や肩口や肩甲骨を踏んできてムカつく。
山波だけはときどき心配そうにオレを見てくれているが意識があることには気づいてくれない。
地味に這って山波に近づく。
言うほどの距離はなかったけれど不自由な体には結構な大変だ。
山波の足をつかむと瑠璃川に頭を踏まれた。
瑠璃川から山波を守って恩を売るつもりが失敗だ。
「水鷹」
「かわいそうじゃない、全然かわいそうじゃない! 絶対にどさくさに紛れてズボンおろすつもりだよ、こいつ」
「そんなことをするのはおまえぐらいだ」
「瑠璃川の言い分も間違っていないかもな。……その手があったって顔しているよ」
「藤高のふんどし姿はまだ完成形じゃないから! 勘違いすんなよ!!」
頭を踏まれてオレは床しか見えないどころか床すら見えない。
オレを無視して三人でまた話しはじめている。
「じっくり見ると毛が微妙にはみ出たりするんですよ。ローライズで履くのが悪いんですけど」
「藤高はエロテロリストなのです!! きゃー」
「インパクトがありすぎてちゃんと見てなかったから別室でふたりっきりで見せてくれない?」
「オレの前で堂々とナニ言ってんすか、先輩! 浮気ダメ絶対ってオレが掲げるスローガンを無視するのはやめて!!」
「おれと藤高が結ばれたあかつきには浮気にはならないから瑠璃川のスローガンは守られる。よかったな」
「思わず納得しかけたけど、何この人、怖い!! オレから藤高をとっていく気満々なのに笑ってる!?」
「瑠璃川は藤高が知り合いでもいいんだろ? 心置きなく知り合いポジションでいろ。とめないから」
「藤高ぁ、先輩が策士過ぎてまずい言質をとられそうで怖いっ! 助けてっ!!」
「今は藤高が母? 父? 兄?」
「はあ? 藤高は藤高ですけど? もうヤダ! この人スゲー性格悪いって、藤高っ」
地団太を踏むように瑠璃川の足が動くのでオレの顔面が床にめり込む。
なんでこんな扱いを受けないといけないんだ。
しばらくして瑠璃川の足が退いたと思ったら山波が「大丈夫か」と声をかけてきた。
見ると瑠璃川と前会長というやつが話し込んでいる。
瑠璃川はチンコをちゃんとしまっていた。
「大丈夫か、顔」
鼻が低くなった気がする。
目線を下げるオレを心配したのか山波が顔を覗き込んできた。
今まで遠くて触れられなかった。一番近くにいることが出来たのはチンコを噛んだ時だけだ。
床に倒れているオレにしゃがみこんでいる山波はあの日に近い気がする。
身体がちゃんと動けることを確認してオレは山波の手を取った。
このままここに居たらどんな酷いことをされるか分からない。逃げるべきだ。
オレは隣の部屋に山波と入り、鍵をかける。
間取りがオレと同じなら寝室だと思ったが大当たりだ。
ベッドに山波を突き飛ばして押し倒す。
ズボンをずり下げてオレは手が止まった。
「ふんどしが貞操帯みたいに機能するのは面白いな」
興味深そうにとくに焦ったところもなく山波がオレを見下ろす。
冷めたまなざしはオレの中のいろんなものを刺激する。
もっと追い詰められて苦しそうな顔をしてもらいたい。
そうしたらオレが救ってやる。
「勃起するようになったかどうか確かめたい、だったか?」
笑う山波は艶っぽくてオレを誘っていた。
だから、オレはポケットから取り出したナイフを山波に突きつけることにした。
元々、山波からオレを部屋に呼び出したんだから目的は決まっている。
やっとオレのことを思い出したのか、思い出せなくても新しい関係をはじめたかったのかはともかく山波はオレを求めている。
「かわいそうな山波」
オレは富士山と鷹と茄子の柄のパンツに刃を突き刺す。
すこし力加減を間違えば山波の肌を傷つけるかもしれないがどうせ使うことがない場所だから構わない。
瑠璃川が浮気だなんだと言っていたけれど山波が男を抱くんだとしたらここを切り落とすのが一番対策になるんじゃないだろうか。
「オレは、オレだけは一生、山波のことは山波って呼んでやるよ」
切り裂かれる鷹の柄に気分が高揚する。
ふんどしだと聞こえた気がするけれど普通のパンツとの違いがよくわからない。
ただ山波がいやがらせを受けているのは分かる。
かわいそうな山波は瑠璃川にずっと嫌がらせをされている。脅されているのかもしれない。
オレの意見に周りの人間も同意していた。
転校してきたオレすらそう思うんだから山波が好きで瑠璃川の近くにいるわけではないと誰もが口をそろえて言った。
山波は瑠璃川と一緒にいるべきじゃない。
「瑠璃川を攻撃する計画があるんだって」
「誰が言った?」
「名前は分かんねえや。山波が痔の薬を渡した奴?」
山波が病院から戻ったあとに山波からだとオレに痔の薬を持ってきた奴がいる。
生徒たちの前でチンコが使い物にならないとバラしたことを山波は怒っていなかった。
瑠璃川がぎゃあぎゃあ言っていたけれど山波はオレのことを思ってくれている。痔の薬はその証だ。
「たしかに似たタイプの容姿だから乗っ取りやすいな」
オレの顔を見て納得する山波。
ナイフを怖がった様子もない。
苛立ってわざと少し刺してやる。
チクッとするだけでもこの状況は恐ろしいはずだ。
「刺したいなら刺せばいいなんていわねーけど、不名誉でもなんでもこの状況だとおまえが一方的に悪者になる」
「それでもいい! もう山波を犯せるならいい!! ずっとオレのことを避けやがって! 舐めやがって!!」
「オレがおまえを覚えてなかったことでプライドを傷つけたのは悪かった」
「悪いと思うならオレの名前を呼んでみろ!」
山波は考えるように目をそらす。
神社から突き落として大怪我をさせたはずなのにオレのことを覚えていない。
オレのことを刻み付けてやったはずなのにオレのことを意識しない。
手に力が入りすぎてぶるぶる震えだす。
「こ、これを、突き刺したら、山波のせいだ、山波が悪い」
口の中が乾いてくる。
目の前が涙で滲む。
オレが山波を追いつめているはずなのにオレのほうが余裕がない。
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※ふんどしにはいろいろと種類があるので今更すこし注釈。
有名な六尺ふんどし(長方形のさらし布を使うもの)を藤高が拒否しているので「ふんどしを締める」という表現にならなさそうな現代的な(?)ふんどしを着用しています。
商品名としては「六尺風○○」あたりでしょうか。
ふんどしの種類の一つらしい「黒猫」でもいいです。
ちなみにイラストをドーンと入れられるので「越中ふんどし」(手前に布が垂れているやつ)が水鷹は好きですがネタすぎて藤高は手をつけません。
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