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第17話
「ええとつまり、黒いお兄さんが魔王で、魔王の寵愛を受けてる三つ星って魔物に手を出したからさっき王国は壊滅して、この教会も壊されにきたと。でも、そっちの銀色のお兄さんの呪いは解きたいから、なんかヒントないかってことで、壊す前に解呪師探してた、と。それであってる?」
「あってるあってる」
「なんとまあ…、えーと、俺、今日命日な感じかな」
カズマは困ったように笑ったが、それには特に答えず、シュバルツは続けた。
「この子の呪い、なんとかする方法、何かないかなあ?」
カズマは、怯えたほうがいいのかなと思いつつ、まあ、今更か、と思考を切り替えてちょっと考えてから答えた。
「俺から提示できるのは三つだね。一つは、俺が無理矢理壊す方法。さっきも言ったけど、どうなるかわかんないからおすすめはできない。二つ目は、お兄さんが自分で呪いを解呪できるようになること。これも、どれくらい時間かかるかわかんないから、いつ活性化するかわからない呪いに対してはのんびり対応すぎるかな、とは思う。で、三つ目は、いっそ呪いを活性化させてしまって心から解けたところを引き剥がす方法。引き剥がすだけなら多分聖なる力でもできるけど、…んーと、その呪いって発動したらどうなんの?」
「…おそらく、私のスキルが発動、暴走します」
「どんな?」
「“共喰い”といって、あらゆる魔力を食い荒らすスキルです」
「え、なにそれ怖」
カズマが両手で体を抱えて震えるまねをする。
アルジェントは苦笑して、シュバルツを見た。
「魔王様」
「うーん、どれもリスク高いよねぇ…。でもせっかくカズマって存在がいるなら、三つ目試すのはありだと思うけど」
「ですが、私はあなたにスキルを向けたくありませんし、あなたの魔力で暴走するのも、嫌です」
私程度の戦闘能力では、暴走したところであなたを傷つけることなどできないのはわかっておりますがそれでもあなたに刃を向けるなど…と続けたアルジェントの瞳は切なげに揺れて、思わず、「可愛い」と口に出そうになったシュバルツだが、すんでのところで堪えた。
「銀色のお兄さん、スキル無しでも強い感じ?」
カズマの問いに、シュバルツが答える。
「ああ、とても」
本調子であれば、あの勇者達だって敵わない程度には、と心の中で付け足す。
「えーと、それ、呪い発動しちゃったら、俺引き剥がす前に死んじゃうよね」
カズマはしばらく宙を見つめる。これが、カズマの思考するときの癖のようで、先程から何度か見られた。
「あっ!」
「ん?」
「魔王さん、銀色のお兄さん、ちょっと待っててくれない?」
「魔王様、と呼んでください」
「こらこら、そんなのどっちでも良いから。待っているのは構わないけど、何しに行くの?」
「防具取ってくンのよ」
「防具?」
「うん、ちょっと思いついたことがあって」
パタパタと走っていったカズマを見送って、アルジェントはため息をついた。
「あの人間、変ですね」
「そうだねぇ」
「我々が魔王様一行であると知って、死を意識しているのに媚びるわけでもなく、ただ解呪について考えるなんて、変人すぎます」
「うん、面白いよね」
ぴり、とアルジェントの胸が痛む。
「気に入り、ましたか?」
「え?うーん、そうだね。人間のわりには、それなりに?…アルジェント?」
アルジェントが、胸を押さえて、俯く。
(まさか、発作?でも、なんで)
自分を意識するような会話したか?とシュバルツは思う。
愛を向けないように、気をつけていたはずだ。
しかし、アルジェントの呼吸はどんどん荒くなる。
痛みに喘いでるというよりは、競り上がってくる何かを押さえつけようとしているような、そんな浅い呼吸。
「アルジェント?」
ぱくぱく、とアルジェントの口が動く。
ー申し訳、ありません。
「アルジェント!」
シュバルツの声をかき消すように、ドン、という音ともに、アルジェントの魔力が噴き上がった。
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