「あっ」 　シュバルツはアルジェントを押し倒す。 　ベットがギシリと音をたて、シーツに皺が寄る。 「僕は、君をずっと抱きたかった」 　言いながら露わになっている胸の突起をぐりっと指の腹で押す。同時に首を吸うと、「ひあっ」と声が上がった。 「優しくしたいし」 　言いながら突起を押して、撫でて、摘んで。 「泣いちゃうくらい感じさせたい」 「ァっ」 　次は身体中にキスを落とす。 　そして緊張しているのか震えるその体を、優しく、優しく撫でながら、「あ、あ」と嬌声の漏れる唇を、己の唇で塞ぐ。 　舌を絡ませ、どうやら敏感であったらしい乳首をぐいぐいと攻める。 「んぅ、あっ、っふ、ぅあ、ア…っ」 　重なる唇から、熱い吐息が溢れていく。 　息がうまく吸えないからか、それとも己が立ち上っているほどのその快感からか、アルジェントの瞳が潤んでいて、シュバルツはやはり、（なんて可愛いんだ）と思う。 　銀の愛し子は、履いたままのズボンがじわりと濡れてきていて、早く触ってあげないと、苦しいかな、とシュバルツはズボンの中に手を入れた。 「あっ！？」 　突然のそれにアルジェントは目を開いて反射的に抵抗するが、「大丈夫」と耳元で囁かれては抵抗の力もするりと抜けていく。 　くちゅり、くちゅり、と焦ったいほど優しく触られて、アルジェントの目のはしから雫がこぼれ落ちた。 「え、痛かった？」 　シュバルツの問いに、首を横に振るが、「じゃあ、気持ちいい？」と聞かれると、どうにも首肯は難しい。 　恥ずかしすぎて、気持ちいいなんて、とてもじゃないが言えなかった。 　けれど、その様子を見ているシュバルツにはちゃんと伝わったようで、「うん、気持ちいいんだね、よかった」と言いながら彼はアルジェントのズボンも下着もを脱がせた。 　そそり立つ自分自身をみられることが、はしたない自分を見られているようで、アルジェントは、ううっと唸って顔を隠す。 「かわいいね。しっかり感じてくれてる。嬉しいよ」 　そういうとシュバルツは露わになった彼を優しく握り、その手を上下に動かした。 　本当は口でしようかと思ったのだが、流石に初めての今そんなことをすれば、羞恥が勝って萎えてしまうかも、とそこは自重する。 「まお、さま…っ、うぁっ、アっ」 　尊敬する王に自分自身を擦られ、恥ずかしいはずなのに、声が我慢できない。 　だんだん、目の前が白くなっていく。昂りが最高潮に近づいている。 　自分だけ先に達するなんて、と臣下としての理性がささやくが、もう、我慢なんてできなかった。 　腰が浮く。揺れる。 「あ、あァっ、魔王、様ァ…、くっ、ふあ、だめ、ダメで、すっ、あっ、手を、はなし」 　最後までは言えなかった。 　手を離してと懇願する直前で、シュバルツはさらに手の動きを激しくしたから、続けられたのは「ァああッ」という一際大きな嬌声と、体の痙攣。 　びくん、びくんとアルジェントが体を丸めて震えるのを見て、シュバルツは嬉しそうに微笑む。 （僕の手で、君をいかせた） 　ここだけの話、アルジェントを想って一人でしたことはあった。 　アルジェントはどんな風に感じるのだろう。 　どんな声で啼くのだろう。 　けれど、リアリティのない妄想なんて馬鹿みたいだったな、なんて思えるほど、目の前のアルジェントはいやらしくて、…可愛らしかった。 「あ、…まお、さま…」 「可愛い可愛い僕の愛しい君。僕は君に、僕を挿れたいのだけれど、どうだろうか。体は、大丈夫？」 　とろんとした目で、アルジェントはこちらを見て、「大丈夫です」と少し掠れた声で答えた。 「私は…、魔王様の、ものです…。貴方の御心のままに、私を、抱いてください」 　恥ずかしいから気持ちいいとすら言えないのに、抱いてくれとは言えるのか。 　そのギャップが妙に可愛くて、少し笑える。 　そんな風に思いながら、シュバルツは、ぺろりと自分の指を舐めた。 　そして、アルジェントを仰向けに寝かせて足を開かせる。 　まだ達した感覚が残っているのか、シュバルツが肌に触れるたびにぴくんと揺れるのも可愛くて、思わず開かせた足の内腿あたりに口付けると、大きく震えた。 「ァ、まおう、さま…」 「ごめんごめん。可愛いね」 　今日だけで何回可愛いって彼に言ってるんだろうな、なんて思いながら、シュバルツは今から自分を入れようと思っているそこに、まずは指を一本ゆっくりと差し込む。 　こんな使い方をされたことのないそこは、突然の異物に反射的にぎゅう、と締まる。 　けれど、シュバルツがゆっくりゆっくりと動かしたからか、もともと才能があったのか、どんどんシュバルツの指を飲み込むのがスムーズになっていく。 　2本に増えた時、息を呑むばかりだったアルジェントの口から、「あん」と声が漏れた。 「痛くない？」 　問いには首肯。 　もうシュバルツ自身の準備は整っているのだが、焦って彼に痛い思いをさせるのは嫌なので、必死に自分を制してゆっくりゆっくりとほぐす。 　アルジェントはアルジェントで、感じたことのない感覚に、どう反応していいか分からずにいる。 　痛くはない。もっと辛いかと思っていたが、そんなことはなかった。 　だが、むずむずするというか、気持ちいいのかそうじゃないのかがわからない。 　そんなことを考えながら、シュバルツの指に触れる感覚を必死に追っていると、突然、体に電気が走ったような、そんな場所があった。 「！？」 「え、なに？」 「あ、や、そこ…っ」 「え、ここ？」 「ァっ！？」 　再び、びりっと体に何かが走る。 　痛みか、と思ったが、違った。 「あ、そこ、…なんか変、です、ぅ…、んぅっ」 「ああ、そうか、君はここがいいんだね」 　得心したように、シュバルツはアルジェントが変だと言ったそこを重点的に指で擦り始めた。 「やあ、ァ、ふっ、まお、さ、ああんっ」 「可愛いね、ほら、また勃ってきた」 　挿れていない方の指でアルジェントのそれを突くと、ううんと体を捩って逃げようとする。 「だーめ。僕の顔を見ててよ」 「ん、ぁあ」 「そう、可愛い可愛い僕のアルジェント。そろそろ、僕を、挿れさせて」 　ずるり、と指を抜き、そして、ずっと準備万全で待っていた自分を、ぐい、と押し付けた。 　解し方がよかったのだろうか。アルジェントの後ろは、ほとんど抵抗なくシュバルツを受け入れる。 　そして、痛みもなかった。 　あったのは、シュバルツのそれでいいところを擦られた快感だけだ。 「！？！？」 「才能あるね、アルジェント。ほら、奥まで入ったよ」 「あ、アっ、あっ、ァッ」 　ぱちゅん、とシュバルツが腰を揺らすたびに水音と、肌がぶつかる破裂音が部屋に響く。 「すごい、気持ちいい。アルジェント、気持ちいいよ」 「ふあっ、あっ、アア、あッ」 　耳元で囁くと、きゅうと後ろがしまる。 　もう返事ができないほど、絶え間なく襲う快感を、アルジェントは感じていた。 （あたま、おかしくなりそうだ） 　アルジェントは頭の中の少なくなった冷静な部分でそんな風に思う。 　けれど、決して嫌じゃない。 「あ…っ？」 「ふふ、そんな切ない声出さないで」 　突然シュバルツを抜かれて、追い縋るように腰が揺れた。 　その様子に嬉しそうに笑った後、シュバルツはアルジェントを寝具の上で四つ這いにさせる。 　いわゆる、バック、の姿勢だ。 「ねえ、アルジェントのここ、よく見えるよ」 「そん、な」 「でも、顔は見えないから、いっぱい声だしてね。感じてるって教えて」 　それだけいうと、シュバルツは再び彼に自分を押し付けた。 　ずるんと入ったそれは、先ほどとは違う、それでも堪らない快感をアルジェントにもたらす。 「ああっ、やァっ、もっ、う、ァんっ、、あっ、ァあっ」 　そこからはもう、アルジェントにはほとんど記憶が残っていない。 　シュバルツも何度も達したが、それ以上にアルジェントは何度も何度も達した。 　快感に狂いそうになる、と思った記憶はあるが、気づけばもう朝だった。 　ベッドの上に置きっぱなしだったためにどろどろに汚れた服と、自分に残る痕、そして自分を抱きしめながら寝ているシュバルツが、昨日の夜が夢でなかったのだと教えてくれる。 「魔王様」 　ずっと、自分を呪っていた。無意識だったが、何度も愛を伝えてくれたのに拒否してきたそれは、きっと何度もシュバルツを傷つけただろう。 　それでも我が王は、ずっと待っていてくれた。 　アルジェントに根付く「こんな自分に」という思いが消えるわけではない。 　これ先、長く付き合っていく感情だろうと思う。 　けれど、それでも。 「貴方への永遠の忠誠と、変わらぬ愛を、誓います。…私の最愛の王」 　アルジェントは、そう小さく呟いて眠っているシュバルツの額に口付けた。 終