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第8話

「……んっ」 忍は目覚めると、ぼんやりする視界のなか、周りを見渡した。 いつもと違う景色に驚いたた、自分が学校へ来ているのだと思い出す。 そして、幼馴染みに無体を虐げられたことに溜息を漏らした。 上体を起こして、痛む手首へ視線を向けると、包帯が巻かれていた。 身体も拭かれていて、サッパリしている。ご丁寧に服も着せられていて、直ぐにあの男を思い浮かべた。 「………彗」 見た所、誰も居ないがもしかしたらいるのかも知れないと思い、忍は彼の名前を呼んだ。 返事はなく、改めて保健室の中を見回す。 誰もいないことを再度、確認して安堵の息を吐いた忍はベットから降りて、窓の外のグランドを見つめた。 「……逃げれるかな」 自分にしか聞こえない小さな声で呟き、少ししてから自傷気味に笑って俯いた。 逃げる? 何処へ? あいつから逃げるなんて宇宙行くぐらい難しい…… 現実逃避は止めようと、首を振って忍は保健室を出た。 1年1組。 2ヶ月前までは1年3組だったのにな… 忍はぼんやりそう思いながら歩いた。

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