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第31話
「彗様、好きです!付き合ってください」
一般的に美少女と言われる類の容姿の女の子が赤い顔で震えながら告白をしてきて、彗は一瞬思考が止まった。
「………好き?」
首を傾げて聞き返すと、女の子はコクンと首を縦に振る。
「悪い……。俺、君の名前も知らないんだけど」
「あっ!すみません。私、水無月 絢香(みなづき あやか)と言います」
ペコっと頭を下げる絢香に彗はにっこり笑う。
「絢香は綺麗だね。別に付き合ってもいいよ」
軽い気持ちで告白を受けた彗だが、絢香は目を見開いてパァーっと花が綻ぶように微笑んだ。
「う、嬉しいです!ありがとうございます。彗様!!!」
「うん。じゃあ、俺行くね。忍が待ってるから」
手を振って教室へ戻ると、忍はクラスメイトの男子2人と会話をしていた。
「忍……?」
「あっ!彗、どこ行ってたんだよ」
パタパタと走り寄ってくる忍に彗は笑顔になる。
「ごめんね。ちょっと女の子に呼ばれて」
「女の子?」
「うん。絢香って子なんだけど、付き合う事になった」
「そうなのー!!!おめでとう!」
彗の言葉に忍は顔を赤くし、興奮しながら祝福した。
「…………うん。ありがとう」
綺麗な彼女が出来て、仲良しの友達に祝福されて嬉しい事の筈なのに彗は心に霧が出来たようにモヤモヤした。
「絢香ちゃん?どんな子?」
ウキウキ聞いてくる忍の口から他の子の名前を聞くだけでイライラしてきた彗は話題を変えた。
「また、紹介する。それより、さっきの2人誰?」
顎で先ほど忍と話していた男子を指すと、忍が嬉しそうに笑った。
「俺も今日初めて話したんだ。中田君と日比野君。凄く気さくで楽しいよ!彗も話してみなよ」
「………」
「ん?彗、どうかした?」
心の靄が更に広がり、彗は顔を曇らせ俯く。
心配気に声をかけてくる忍の手を握りしめると、忍はその手を強く握り返した。
「彗?しんどいの?保健室行く?」
体調不良と勘違いされ彗、彗は首を横へと振った。
なんでこんなにイライラするんだろ?
忍、なんでそんなに楽しそうなの?
俺が居なくて寂しくなかったの?
この感情がただの独占欲なのかどうなのか分からなくて、先ほど、忍の話をしていた2人へ視線を向けた。
俺の忍に近付くな……
そう思った時には彗の体は勝手に動いていた。
2人に駆け寄り、拳を振り落として二人の顔面を強打する。
忍は驚いて止めに入るが、他の人間を庇う忍が許せなくて更に二人を殴りつけた。
「忍に近づくな……」
ただ殴られ続け、顔面を血で埋め尽くし、意識をなくしたクラスメイト二人に彗はぼそりと呟いた。
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(2巻まで公開)
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