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ある日の日常 4 

「俺といるときはこんなだよ」  だけどこれは俺専用、そういって首に腕を回して抱き寄せられた。 「駿也さん」 「ごめんね、仕事、早いのに」  顔が近づき、その目は潤み欲を含んでいる。 「体力には自信があります」  それよりも自分に対して遠慮をしないでほしい。 「駿也さん、言ってください」 「一太君の、たべていい?」 「はい。お腹いっぱいになるまで食べてください」  腕を腰へと回しキスをする。  沖の身体はどこもかしこも敏感で、郷田の指がふれると喜びで身体が跳ね上がり、 広げた足から見せる後孔は、押すとぱくぱくと食いついてきた。 「可愛いですね」 「一太君、意地悪しないで」  いつまでも入口付近をいじる郷田に、しびれを切らして沖が切ない表情をしている。  もう少し見ていたい気もするが、自分のほうも限界で、指を奥まで入れて解し始めた。  結局、郷田のほうが我慢できず、沖に負担をかけてしまった。  それなのに郷田よりも早く起き、朝食の用意をしてくれた。 「一太君、俺に申し訳ないと思っているでしょう?」  その通りなのでうなずくと、山盛りのご飯を手渡された。 「一緒に住もうって言ったのは、朝、一太君に温かいご飯を食べて仕事に行ってほしいから。それって俺の我儘なんだよ」  俺の癒しの時間なんだからという。  自分にとっても沖との時間は大切なものだ。遠慮された時は悲しかった。まさにそれと同じだ。  だから沖に言うのは謝る言葉ではなく、 「ごはん、いただきます」  だ。 「はい。召し上がれ」  選んだ言葉は正解だったようで、沖は微笑みながら見ている。  ほこほこと湯気を立てる白米に、焼き魚とみそ汁。それだけでも十分なのだが、そこにトメさんから譲り受けたぬか床で作った漬物と卵焼き。  漬物をつかみ白米を大きな一口。  一緒に食事をする沖の箸が止まり、こちらを眺めている。 「駿也さん、今日も美味しいです」  料理はもちろん、駿也さんと食卓を囲んでいるから。そう付け加えれば沖が目を見開き、頬を真っ赤に染めた。 <ある日の日常・了>

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